大腸・肛門病の知識 痔プロ.com
Knowledge of Colorectal Disease
STEP2
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎とはどんな病気ですか?

潰瘍性大腸炎潰瘍性大腸炎とは、大腸の内腔に炎症がおこる病気です。下血、下痢、腹痛、体重減少、発熱といった症状がおこります。さらに、長年にわたって潰瘍性大腸炎が持続している人は、大腸癌発生の危険が高くなります。潰瘍性大腸炎の原因はいまだにわかっていません。

★ILEUM:回腸
★COLON:大腸
★RECTUM:直腸

潰瘍性大腸炎はどのように治療するのですか?

最初に薬物療法を行います。炎症を抑える薬(ステロイドなど)や抗生物質などの薬剤を使います。治療は通常長期間におよびます。ステロイドは合併症を起こすことが多いので、短期間に限って使用されます。炎症が再燃した場合には薬剤の量を増やしたり、新たに薬剤を追加したりして対処することになります。腸管の安静を保つために、入院を要することもあります。
どのような場合に手術が必要になるのですか?

命にかかわるような重篤な合併症が起こった場合には手術が必要になります。たとえば大量に出血したり、消化管の穿孔(穴があくこと)が起こったり、感染を起こした場合などです。
また、長期間の薬物治療に反応しない場合にも手術の適応となります。患者さんが快適な生活を送ることがもっとも大事なことですから、手術を考慮する前にあらゆる薬物治療を試みる必要があります。
長い間潰瘍性大腸炎が持続しており、癌化する恐れが高い人では手術が考慮されます。このような人では内視鏡検査と生検を頻回に行い、癌化の兆候が認められれば手術を行うことになります。
どんな手術を行うのですか?

かつて潰瘍性大腸炎の手術は、大腸、直腸、肛門すべてを取り除く方法が行われていました。これは大腸全摘術と呼ばれ、一回または数回に分けて行われる手術です(図A)。この手術を行えば潰瘍性大腸炎は治癒し、発癌の恐れもなくなりますが、人工肛門(図B)を作らなければなりません。この方法ではパウチ(腹壁に装着して便をためるビニール袋)を常に装着しておく必要があります。
他の方法としては、腸管でリザーバー(便をためるスペース)を作る方法があります(図C)。人工肛門が必要になるのは上記の手術と同様ですが、パウチを常に装着しておく必要はありません。この場合、チューブをリザーバー内に挿入して一日3〜4回洗浄を行います。この方法でも癌化したり炎症を繰り返したりする恐れはなくなりますが、もしリザーバーが縫合不全を起こした場合には、リザーバーを温存するために追加手術が必要となることがあります。
潰瘍性大腸炎 手術
大腸だけを切除して、直腸と肛門を温存する手術もあります(下図)。この方法では、小腸を直腸につなぐため肛門機能を保つことができます。これは人工肛門を作らずにすむ術式なのですが、直腸が残っているので炎症が持続する恐れがあります。そのため頻回の排便が続いたり、便意を我慢できなかったり、残った直腸に癌が発生する可能性が残ります。
潰瘍性大腸炎 手術
ほかの術式はありますか?

回腸肛門吻合術は潰瘍性大腸炎の最も新しい術式です(下図)。この手術では、すべての大腸及び直腸を切除し、肛門は温存します。小腸でリザーバーを作り、直腸のかわりの役目を果たすようにします。通常、一時的に人工肛門が必要になりますが、これは数ヶ月で閉じることができます。リザーバーが便をためる役目を果たすので、排便の回数はそれほど多くならなくてすみます。この術式では肛門からの排便が可能であり、排便回数は一日5〜10回となります。潰瘍性大腸炎の再発もほぼ防ぐことができ、今までどおり肛門からの排便が可能です。時にリザーバーが炎症を起こすことがありますが、この場合抗生物質が必要となります。ごく一部にリザーバーが正常に機能しなくなる人がいますが、その場合リザーバーを取り除く必要があります。この場合には人工肛門が必要となります。
潰瘍性大腸炎 手術
どの治療を選択するのがよいのでしょうか?

どの治療を選択しても、潰瘍性大腸炎を完全に元の状態に戻すことは不可能です。どの治療法にも利点と欠点があります。十分な説明を受けた上で、生活の質を保てる治療法を選択する必要があります。
★出典:ASCRS
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