大腸・肛門病の知識 痔プロ.com
Knowledge of Colorectal Disease
STEP2
過敏性腸症候群
過敏性腸症候群とはどんな病気ですか?

過敏性腸症候群の頻度は高く、30%の人が一生に一度は経験します。これには色々な名称があり、神経性腸炎、大腸痙攣、腸痙攣、粘液性腸炎、痙攣性大腸炎などと呼ばれることがありますが、潰瘍性大腸炎やクローン病とはまた別の状態です。
過敏性腸症候群では、腹痛や腹満感といった症状がしばしば同時に起こります。この状態は一般的な意味での病気とは異なります(風邪のように人から人へ伝染することはないし、手術や薬剤にて治療することができない)。過敏性腸症候群は命にかかわることはありません。
どんな症状が起こりますか?

過敏性腸症候群の人には便秘や下痢といった症状が起こります。時には便秘と下痢が交互に繰り返すこともあります。過敏性腸症候群の人では、仙痛が起こったり、突然便意や排ガスが起こったり、腹満感が起こったりすることもあります。粘液が腸の蠕動に伴って排出されることがあり、これも過敏性腸症候群の症状の一つです。
過敏性腸症候群では、血便は決して認められません。もし血便があれば、きちんと検査を受ける必要があります。
原因は何ですか?

過敏性腸症候群は、消化管の筋肉が異常な収縮を起こすことによって生じます。
この筋肉は腸管の周囲を取り囲んでおり、自動的に蠕動することで食物を自動的に直腸へ送り、肛門から排泄します。
過敏性腸症候群は腸管の機能の異常によって起こるものです。顕微鏡で筋肉が正常に見えた場合でも、蠕動が強すぎたり弱すぎたり、または遅すぎたり速すぎたりといった機能の異常が起こることがあるのです。

過敏性腸症候群 ★ILEUM:回腸
★COLON:大腸
★RECTUM:直腸
ストレスは過敏性腸症候群と関係ありますか?

精神的ストレスは過敏性腸症候群と関係があります。脳と腸管は神経で密接につながれており、腸管の機能を自動的にコントロールしています。そのため、神経質になったり心配事があった場合に、吐き気や下痢を経験する人がたくさんいるのです。
ストレスがわれわれの腸管に及ぼす影響をコントロールすることは困難です。従ってストレスの原因(重圧のかかる仕事や家庭内の緊張など)を少なくすることは、過敏性腸症候群の症状を和らげるのに有効となります。
過敏性腸症候群以外でも同じような症状が起こることがありますか?

過敏性腸症候群の診断を正しくつけるには、大腸肛門専門医を受診して詳しい診察や検査を受ける必要があります。
S状結腸内視鏡検査、大腸内視鏡検査、便潜血検査、レントゲン検査および心理学テストといった検査を行い、あなたの症状が過敏性腸症候群以外の原因で起こっているのではないことを確かめる必要があります。これらの検査を受ければ、癌や憩室炎や炎症性腸疾患といった疾患を除外することができます。
過敏性腸症候群はどのように治療するのですか?

「過敏性腸症候群は命に関わる重大な疾患ではない」ということを理解することは、不安やストレスを軽くするのに役立ちます。時にはそれだけで症状が軽快することもあります。心理カウンセリングを受けたり、ストレスを減らすように努めることも症状を和らげるのに有効な方法です。
繊維質の摂取を増やすだけで症状が改善する場合もあります。繊維質食品を食事に加えることは、腹痛の程度を和らげ、便通をスムーズにし、腸管内の過剰な水分を吸収することで下痢を防止するためにも有効です。
便秘が主な症状の人は、便を柔らかく保つために繊維質食品と水分を多めに摂取する必要があります。
腹痛や腹満といった症状は、繊維質食品を摂取するだけでは改善しないことがあります。その場合、腸管の蠕動を正常に戻すような薬が処方されることもあります。人によっては他の薬が有効な場合もあるので、薬の変更が考慮されることもあります。
避けたほうが良い食品はありますか?

カフェインや乳製品やアルコール類は過敏性腸症候群の症状を悪化させることがあります。多量のカフェインを含んだ食品(コーヒー、紅茶、チョコレート、コーラなど)やアルコール類(ビールやワインなど)などを避けるよう勧められることがあります。
チーズや牛乳といった乳製品は下痢や便秘を引き起こすことがあるので、これを避けるように勧められることもあります。乳製品はカルシウムを多く含んでいるので、この場合代わりの食物でカルシウム摂取を心がける必要があります。
また、ニコチンは過敏性腸症候群の症状を悪化させることがあるので、タバコを吸う人は注意が必要です。
症状が改善するまでどのくらいかかりますか?

過敏性腸症候群の症状はゆっくり改善していきます。症状が明らかに改善するまでに半年以上かかることもあります。過敏性腸症候群の治療には忍耐が必要です。
腸管はストレスに反応しやすくなっており、この傾向はずっと続きます。食事を正しくとり、繊維質を多く摂取し、必
要に応じて薬を使用すれば症状を著明に改善させることができます。時には軽い症状が再び起こることもありますが、大きな問題になることはあまりありません。
過敏性腸症候群は他の病気の原因になることがありますか?

敏性腸症候群は、癌や炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)を引き起こすことはありません。過敏性腸症候群が長期におよんだ場合には大腸憩室が生じることもありますが、過敏性腸症候群が大腸憩室の原因になっているわけではありません(大腸憩室とは腸管の壁にできたポケットのことであり、良性の疾患です)。大腸憩室はときに憩室炎を引き起こします。憩室炎とは憩室が炎症を起こした状態であり、ときに手術が必要となります。過敏性腸症候群の治療のために繊維質の食事を取ることは、憩室などの他の大腸疾患の予防にも役立ちます。
★出典:ASCRS
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