大腸・肛門病の知識 痔プロ.com
Knowledge of Colorectal Disease
STEP2
便秘
便秘とは?

便秘という言葉は、人によって色々な意味合いがあります。一般的には排便の回数が減少することを指しますが、便の量が少なくなったり、排便の際にいきむ必要があったり、十分に排泄された感覚がなかったり、定期的な排便を維持するために浣腸、坐薬、下剤等を要する状況なども便秘と呼ぶことがあります。
殆どの人の排便回数は一日3回週3回くらいですが、一週間以上排便がなくてもこれといった不快感や悪影響がない人もいます。正常な排便習慣は食事に影響されます。平均的なアメリカ人の一日の繊維摂取量は12〜15グラムですが、25〜30グラムの繊維と1.5〜2リットルの水分を毎日摂取することが正常な排便に必要とされています。正常な腸管の機能を維持するために、定期的に運動することも効果的です。
繊維を多く含む食物、例えばふすま、小麦、穀類、ある種の果物、野菜等で一日2530グラムの繊維を摂取することが正常な腸の機能のためにはお勧めです。
約80%の人が、人生のいずれかの時期に便秘に悩まされたことがあり、短期間の便秘は普通に起こるものです。週に3回以下の排便が続いた場合に便秘の診断となるのですが、「少なくとも一日1回の排便が必要」という誤った考えが広く信じられているために、下剤を必要以上に使用したり依存症になってしまうことがあるのです。あんぱん
便秘の原因は?

便秘の原因として、繊維や水分の不十分な摂取、座り仕事、環境の変化などといったいくつかのものがあげられます。便秘は旅行、妊娠、食生活の変化といった要因でさらに悪化します。一部の人では、便意を我慢し続けることによって便秘になることもあります。
便秘の原因のうち深刻なものとして、大腸の一部が狭くなっている場合があります。便秘が持続する場合には大腸専門医を受診して診察を受ける必要があります。
便秘は甲状腺疾患、多発性硬化症、パーキンソン病、脳卒中、脊髄損傷といった神経系や内分泌系の異常によって起こることもあります。
薬で便秘になることがありますか?

薬
鎮痛剤、抗うつ剤、精神安定剤、その他の精神系薬剤、血圧の薬、利尿剤、鉄剤、カルシウム剤、アルミニウムを含む制酸剤といった多くの薬が便秘の原因となりえます。
便秘でない人が毎日排便を出そうとして下剤依存症になり、さらに状況を悪くしているケースも一部にあります。
便秘のときはいつ医師に相談すればよいのですか?

排便習慣に変化が生じた場合、たとえば排便回数や便の量が増えたり減ったりした場合や、排便が困難になってきた場合には医師の診察を受けるべきです。また便秘の症状が3週間以上にわたって持続する場合も医師に相談すべきでしょう。もし便に血液が付着していた場合には、直ちに大腸専門医を受診してください。

便秘の原因をどうやって調べるのですか?

便秘の原因には色々なものがあるため、原因を明らかにすることは正しい治療を行う上で重要です。医師は器質的な異常、たとえば腫瘍や狭くなっている部位が大腸にないかどうかを調べます。
通常、直腸肛門領域の指診を行うことが第一段階となります。指診は比較的簡単に行え、これで便秘の原因が明らかになることがあります。内視鏡検査や注腸造影を行えば、ポリープ、癌、憩室などといった便秘を引き起こす重要な疾患が明らかになります。もしこのような異常が見つかった場合には、その疾患に対する治療が行われます。
他の検査を行うことにより、機能的な異常が見つかることがあります。たとえば「マーカー検査」があります。マーカーが入っているカプセルを飲んだ後に数日間くり返してレントゲン検査を行い、腸管の蠕動異常がないかどうかを知る手掛かりになります。肛門および直腸の機能を調べるための検査もあります。例えば細いプラスチックの管を用いて肛門括約筋の反射を調べる検査や、排便時の直腸肛門の機能を調べるX線検査等があります。
多くのケースでは、便秘の原因となる疾患が明らかになることはまれで、この場合は非特異性便秘(明らかな原因がないということ)と呼ばれます。
便秘の原因がなんなのか、腸管の蠕動が遅いからなのか、排便時の困難のためか、あるいは他に原因があるのかどうか調べるのは重要なことです。医師が最適な治療方針について助言してくれるでしょう。
便秘はどのようにして治療するのですか?
リンゴ
便秘の人の多くは、食事に繊維質(ふすま、小麦、穀類、ある種の果物、野菜等)を加えること、さらに水分を十分摂取することで治療できます。場合によってはライフスタイルを変える必要があるかもしれません。野菜繊維を含む栄養補助剤が勧められることもあります。というのは、これらは便秘を改善するほかにも色々な利点があるからです。コレステロール値を下げたり、大腸ポリープや大腸癌の発生率を下げたり、痔核の予防にも有効です。
繊維を含む栄養補助剤を服用しても、効果がでるまでに数週間?数カ月を要することがあります。しかしこれは無害で依存性がありません。一方ある種の刺激性の下剤は使い過ぎたり依存症になるぶどう恐れがあります。また浣腸や坐薬は医師の指導の元で使用するべきです。
毎日同じ時間に排便することが有効な場合もあります。またバイオフィードバックという治療法で弱った肛門括約筋を鍛えることが有効な場合もあります。極めてまれですが、便秘の治療に手術が必要になる場合もあります。大腸肛門専門医と相談した上で、これらの中から最善の治療法を選択することになります。

★出典:ASCRS
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