大腸・肛門病の知識 痔プロ.com
Knowledge of Colorectal Disease
STEP2
直腸脱
直腸脱■直腸脱の原因と症状

直腸脱は直腸の全層が全周にわたって肛門から脱出する病気です。先天性と後天性があります。一般に若年者で直腸脱の程度が重く、脱出腸管が長く、時には小腸大網などを含んだ腹膜盲嚢部も一緒に脱出します。長さ30〜40cmに達する例もあります。後天性の高齢者で一般に5〜10cm位の例が多いのですが、60代、70代、80代と年齢が高くなるにつれて頻度は高くなります。排便時のみの脱出で容易に環納できる時は医師を受診しない例が多く、環納不能になったり起立時でも脱出したり、あるいは出血をしばしば伴うようになって受診するケースが多いのです。これらの直腸脱では、必ず肛門括約筋の弛緩、機能障害を伴っています。骨盤を支えている肛門挙筋や肛門括約筋の低下とともに直腸が脱出しやすくなっていくのです。
■直腸脱の発生原因

直腸脱の発生には大きく2つの定説があります。腹膜の底部が会陰近くまで下垂して腹腔内臓器が嵌入して直腸前壁を圧迫して滑脱するという説。また直腸が重なり合って重積を起こし肛門管から脱出する説があります。しかし、どちらか区別することが難しい場合もあり、実際はいろいろな要因が複合して直腸脱が発生します。要因の主なものは、直腸S状結腸の過長、直腸固定が弱いための直腸重積、深く下降した骨盤底、肛門挙筋の機能低下、内外括約筋の機能低下、及び仙骨湾曲の不足(直立した形の直腸)があります。
■直腸脱の検査法

まずは排便でどれくらい脱出するかを怒責排便検査で確認します。手拳大かそれ以上で大きく成因が異なるので、できるだけいきむことで正確な脱出の程度を診断します。次にデフェコグラフィーまたはダイナミックシネデフェコグラフィーを行います。これは直腸S状結腸がどのように肛門から脱出するか、実際に造影しつつ直腸脱の成因についても診断できます。また直腸肛門角の角度の計測も大切です。また直腸肛門内圧検査を行い、どの程度肛門をしめている力があるか、括約筋の機能低下の程度を調べます。これらはいずれも、治療方針を決める上で大切な検査で必要で欠かせません。
■直腸脱の治療法

直腸脱を内科的に治すことはできません。したがって外科的手術治療が必要です。次に当院で行っている主な手術法を説明します。
●経会陰、経肛門的方法
1) ティールシュ法 テフロンテープなどで肛門管を締めて肛門を狭くして脱出しにくくする。これはもっとも簡便な方法で、主として超高齢者などに局所麻酔で行う。
2) 肛門挙筋の補強術 ・前方挙筋修復術
・後方挙筋修復術
これらは外括約筋を含めて肛門挙筋を縫い縮め補強する方法で、やはり直腸が肛門から脱出しにくくする。
3) 直腸粘膜縫縮術(直腸粘膜を短縮させること) ・GANT・三輪法:従来からよく行われている方法。こぶをたくさん作って縮める。
・縦列縫合縫縮:8〜12本くらい長軸方向に縫い縮める。GANT法より排便障害が少ない。
・PPH:環状切除して縫合する。不完全型の直腸脱には良い。
4) 直腸の切除術 ・デロルメ法:直腸粘膜を長く切除し、筋層を縫い縮める。
・アルテマイヤー法:経肛門的に直腸切除結腸を切除する。
●開腹的手術
腹腔鏡下に行われることもあるが、基本的には直腸を固定して、ずり下がらないようにすることが目的となる。多くの手術法があるが仙骨前面に直腸の後方を縫合固定するKunmel手術やテフロンを用いて縫合固定するRipstein手術が一般的です。S状結腸が過長な場合にS状結腸を切除する必要がある場合もある。
■東葛辻仲病院では

当院では100歳の治験例もありますが、90歳以上の超高齢者では縦列縫縮とティールシュ法の組み合わせ、60歳以上はデロルメ法と前方または後方の肛門挙筋縫縮術としています。若年の症例ではアルテマイヤー法または開腹(腹腔鏡下)によるKunmel法を選択しています。
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