大腸・肛門病の知識 痔プロ.com
Knowledge of Colorectal Disease
STEP2
直腸瘤
■直腸瘤の症状と成因

この聞き慣れない病態は、排便障害の一種です。排便時にいくらいきんでも思うように便が出ないので、会陰などを指で押さえて肛門から便が出やすいようにするような例が特徴です。日常、裂肛や脱肛があると、そのために出にくいと考えがちですが、実は肛門のすぐそばの下部直腸にヘルニアの様な瘤りがあり、肛門への便の排出がうまくいかないために起こります。女性に圧倒的に多いのですが、男性にもあり得ます。ほとんどが直腸前方に瘤となる直腸の突出があり、膣中隔の脆弱に加えて骨盤の下垂や会陰の下垂が重なって起こります。特に経産婦で子宮摘出などを受けた、排便困難を訴える例では高率に認められます。しかし、若く未婚の女性でも直腸瘤を認めることがあります。男性では前立腺があるため生じにくいのですが、後方や側方の骨盤挙筋が脆弱な例で、直腸瘤を認めることがあります。

骨盤臓器脱の説明と治療に関してはこちら
直腸瘤■直腸瘤の診断

肛門指診によって指を挿入した直腸が膣側へ大きく突き出されることで推察されます。指で会陰など押して排便の助けとしているということを訴えれば確かとなります。デフェコグラフィーは排便造影と呼ばれ、実際の排便のようにしてバリウムを出す時の像を撮影します。この撮影により直腸瘤の程度、骨盤下垂や会陰下垂の大きさ、直腸と肛門管の角度などを調べて病態を診断します。直腸肛門内圧検査も行います。これは肛門機能の低下を伴っているかどうかを確認するものですが、直腸瘤単独では内圧などの数値に大きな低下はありません。直腸脱や直腸重積を併発している例では肛門機能は低下しています。
■直腸瘤の治療
●内科的治療
バイオフィードバックや投薬、生活習慣の改善により排便をより楽にさせる。
●手術治療: 直腸瘤に対して根治的方法となり得る。
1) 経直腸(経肛門)的方法 直腸粘膜を切開して、膣中隔を補強した後、直腸粘膜も縫縮する。併存する痔核なども切除できる。直腸粘膜および筋層を大きく2列に縫縮する方法もある。
2) 経会陰的方法 会陰を横切開して外括約筋を越えたところで、恥骨直腸筋を縫縮し、また外括約筋も縫縮しつつ会陰形成も行う。
3) 経膣的方法 膣入口部から膣粘膜を剥離し、直腸瘤を巾着縫合した後に、膣中隔を縫合強化する。またさらに恥骨直腸筋を縫いよせて直腸が前方へ圧出されないような壁をつくる(前方肛門挙筋形成)。必要に応じて同時に会陰形成を行うこともある。
■東葛辻仲病院では

当院は中高年の症例では経膣的方法を用いて高い治療成績を得ています。経直腸的方法はしっかり行うと直腸膣瘻となり得る危険があり、軽くすませると容易に再発します。したがってまだ出産を期待する症例では行い得ますが、中高年の症例は前方の挙筋形成を含めた経膣的方法が最良と考えています。
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