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■肛門がんとは? がんとはそもそも生体の正常な細胞が遺伝子的変化の連鎖によって他の隣接する細胞を押しのけて限りなく増殖していく一連の病態といえます。がんが成長すると、周りの他の組織へ浸入します(局所浸潤)。また血管やリンパを通して身体のあちこちに拡がって行きそこで成長します(転移)。腫瘍、または身体で発育するものは良性と悪性(癌性)があります。良性のときは発育はしますが他へ拡がって行くことはありません。悪性腫瘍は深く浸入し拡大する(転移する)能力があるのです。 肛門がんは肛門縁周辺の細胞や直腸肛門接合部までの肛門管内の細胞から発生します。多くの肛門がんは肛門皮膚部から発生し、扁平上皮がんといわれます。いくつかの肛門がんは口側の肛門管の特殊な上皮から発生して総排泄腔がんと呼ばれます。この辺からはいくつか他のタイプのがんも起りますが、先の2つの頻度が高いのです。これらのがんはいずれも似た生物学的特徴があり、同様に扱われます。細胞自体は悪性ですが、表在組織より深くは浸潤せず前癌状態にとどまります。この状態はボーエン病と呼ばれています。 |
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■肛門がんの頻度は? 肛門がんの頻度は少なく、消化器がんの1〜2%です。米国では毎年3400人の肛門がんが新しく診断されていますが、約500人は毎年この病気で亡くなられます。大腸がんと比較すると大腸がんは毎年14万人が罹り、5万人が死亡しています。 |
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■リスクは何でしょうか? 肛門がんの真の原因はわかっていません。しかし肛門がんに関する危険因子はある程度わかっています。以下列挙してみましょう。 ・年齢はほとんどが50歳以上である ・コンジローマという肛門の疣が発育してがん化する ・肛門性交をしている人 ・喫煙:有害な化学物質ががん化の危険を増す ・免疫力低下の状態:臓器移植や免疫反応を低下させる薬を使っている人、あるいはHIV感染の人はリスクが高いといえます。 ・慢性の局所の炎症:例えば慢性裂肛を肛門の開放創が長期に存在すると少しリスクが上がります。 ・直腸、前立腺、膀胱、子宮頚部などの骨盤臓器のがんに対する放射線療法を受けた人は肛門がんのリスクは高くなります。 |
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■肛門がんは予防できますか? 完全に予防できるものは少ないのですが、危険因子を日常生活のうえでチェックして行くと著しくがん化のリスクを減らすことができます。肛門性交を避けHPVとHIVウイルスにかからないことです。どんな性交の時もコンドームを使用することです。コンドーム自体が感染のリスクを除く訳ではありませんが、それを減らすことはできます。肛門がんを含む多くのがんは禁煙することでがん化のリスクを減らすことになります。 |
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■肛門がんの症状は何ですか? 多くの肛門がんは早く発見されます。肛門がんは医師が直接診て触れる消化管の一部にできるものです。肛門がんの症状は以下のようなものです。 ・直腸肛門からの出血 ・肛門の腫瘤 ・肛門部の痛み ・繰り返す頑固な痒み ・排便習慣の変化や排便の際のいきみの増加 ・細くなってきた便 ・肛門から、膿や粘液の分泌 ・肛門やソケイ部のリンパ節の腫脹 これらは痔核による症状よりは軽いものの自分で痔だと勝手にみなしてはいけません。上記症状があれば必ず医師に相談して下さい。 |
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■肛門がんはどのようにして診断するのですか? がんを早期に発見することが完治させる鍵となります。直腸肛門指診による定期的検診により多くの病変を早く見つけて治療することとなります。結腸直腸がんと肛門がんの通常の検診では指診による検査の他に1年に1回の便潜血テストや5〜10年に一度の大腸内視鏡が行われます。検診は50歳以上から始めます。もし医師により肛門がんが疑われたら生検をして確定診断します。もしがんであれば、その程度や拡がりを診断することになります。 |
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■肛門がんはどのように治療するのですか? 肛門がんの多くの症例の治療は効果が期待できます。肛門がんに対しては基本的に3つのタイプの治療法があります。 ・外科的切除法 ・放射線治療:高線量でがん細胞を殺し、さらに化学的治療でがん細胞を殺して行きます。 今や放射線と化学療法の併用が標準化された第一選択の肛門がんの治療法です。 場合により小さな限局した腫瘍については外科的切除で括約筋を保存的に行うことができます。 |
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■人工肛門は必要なのでしょうか? 肛門がんの治療を受けた人の大半は、人工肛門は必要ありません。もし腫瘍が放射線と化学療法の併用療法に反応しなかったり、またその後に再発したり、極めて特殊なタイプであれば直腸切断術を行って、人工肛門を造設することが必要となります。 |
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■肛門がんの治療後、どのようなことが大切でしょうか 治療の結果について再発がないかどうかの評価を経過観察して行くことが大切です。殆ど治療法は効果的といえます。加えてたとえ肛門がんは再発しても早く発見されれば治癒可能です。定期的に経験豊かな医師による注意深い診察を受けつつ経過観察することが最も大切です。何か症状があれば直ちに担当医に伝えるようにしましょう。 |
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■結論 肛門がんは肛門管の皮膚や粘膜から発生する稀な腫瘍です。多くのがんと同様早期発見が高い生存率に直結します。多くは化学療法と放射線治療の併用で治療されます。再発しても再度有効に治療されます。何かの直腸肛門の症状があれればすぐに医師に相談し、肛門および結腸直腸がんの検診検査を受けることが勧められます。 |
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★出典:ASCRS |
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