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Dr.辻仲の大腸肛門病教室
 
第四回 難治性痔瘻の治療

<難治性痔瘻の要因>
●深部複雑痔瘻(Horseshoe and High complex fistula)
 坐骨直腸窩痔瘻,骨盤直腸窩痔瘻
●合併疾患による難治性痔瘻
 ・痔瘻癌の潜在
 ・炎症性腸疾患,特にクローン病
 ・外傷,異物,感染症による骨盤膿瘍と穿痛
 ・重症糖尿病,AIDSなどの全身疾患
 ・重複直腸などの奇形
一般の患者様も医師も、痔瘻の治療は簡単なものと考える傾向にあります。逆に、戦前戦後のような結核が流行していた時代には、痔瘻は結核性のものが多いと考えられ、極めて難治の例もあったので恐れられている場合もあります。しかしながら、痔瘻はその形や進行度を正確に診断し、最も適切な治療を施せば完治します。したがって、専門病院の痔瘻の治療の理想は、治癒期間が短い、肛門機能が保存される、再発がないことと考えられています。ところが、難治性痔瘻はこれらの理想が実現し得ず、一般的には何回も手術や処置が必要で、長い治療期間を要する症例といえます。これらの中には表のように、クローン病や結果的に痔瘻癌であった例や、稀ながら重複直腸を伴う例もあります。特に、最近は大腸の炎症性腸疾患に合併した複雑痔瘻が多く見られるようになり、いつもと少し異なったタイプの痔瘻を見れば、必ず大腸をチェックする必要があるのです。


しかし、他の疾患を併発しない肛門腺からの感染膿瘍を原発巣とする痔瘻が難治化する例は、直腸骨盤窩痔瘻や坐骨直腸窩痔瘻が殆どです。これらのhigh-complex fistulaが難治化するのは、1次口や2次口や瘻管と膿瘍が深くて複雑なため、1回の手術で治りきらないからです。


1度で治そうと大きな切開をしすぎると、肛門機能が損なわれます。また、肛門の機能を重視するあまり、不十分な手術だと再発率が高くなります。これらの複雑痔瘻の手術は、高度なバランスが必要です。そのために、経験が豊富で診断や治療の技術が高い、また、そのための設備も完備している大腸肛門病の専門施設で治療される必要があるのです。

過去13年間に経験した痔瘻手術例は6250例で、再手術や再処置を要した例は全症例では192例(3%)です。high-complex fistulaである骨盤直腸窩痔瘻や深部の坐骨直腸窩痔瘻は、789例中69例(8.7%)でありました。これらの痔瘻症例の初回手術は,肛門機能を重視した括約筋保存のための筋縫合や筋充填法などの肛門保護術を行っています。再発例には,再度同様の手技を行うか,Seton(セトン)法やHanley(ハンレー)法を行い、完治させ得なかった症例は1例(0.1%)だけでした。



最近では、原発膿瘍部へ直接到達する手技で、初回手術の再発は減少しています。また、便そのものが漏れる(便失禁)の症例はありませんが、下痢便やガスが我慢しにくい症例は存在します。しかし、手術の治療方法は診断や手術後の改善でそのような例の頻度も急減しています。とにかく、肛門機能を温存させつつ、完全に痔瘻を治すことが大切です。痔瘻で悩んでいらっしゃる方は是非御相談下さい。

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