内痔核に対する治療法は
1.生活指導と薬物療法(軟膏、坐薬等)により諸症状を改善する「保存療法が」基本。
2.注射療法(硬化療法)や日帰り手術(ゴム輪結紮法、外来手術)
3.入院手術療法
と痔核の程度により、種々な治療方法があるが、そのうち痔核硬化療法に用いられる注射薬は日本において現状ではパオ・スクレー(Phenol Almond
Oil)が多用されている。本薬剤は痔核からの出血のコントロールとして用いられることが多いが、脱出する痔核に対し使用しても脱出がおさまる効果はあまり無いため、使用される対象が限られている。
しかし、中国では約30年前から内痔核に対し、『消痔霊』というミョウバン液を主体とした薬剤の局所注射療法が行われており、痔核の脱出、出血に対し有効であることが報告されていた。そこで、我国でも製薬会社が開発に乗り出し、2000年10月から臨床治験(第III相試験、開発名:OC-108)が実施されました。当院を含めた全国10施設の治験実施病院が参加し、その結果がまとめられたところ、非常に良い結果であり、今後厚生労働省の認可がおりれば、早ければ2004年末には発売される予定であります。
ここで、この新しい硬化療法剤について説明します。本剤は、『消痔霊』と基本的には同様の製剤処方で硫酸アルミニウムカリウム、タンニン酸を主成分とする局所注射用配合(硬化療法)剤です。
【投与方法】腰椎麻酔または肛門局所麻酔下に、専用の肛門鏡と注射針(写真)を用いて、内痔核に直接、四段階に分けて注射(四段階注射法,図)するもので、技術的に習熟することが必要であると言われています。
【効能・効果・副作用】日本での治験結果によれば、103例中97例、94%の症例で痔核の脱出が消失し、投与後の疼痛は軽微で、重篤な合併症はなかったということです。
【問題点】
1.長期の成績が不明であること:治験の結果では1年後の脱出の再発率は約13%で、更に長期間になれば再発率が増えると考えられること。
2.投与方法(注射法)が繁雑で技術の習得が必要であり、施行医師により治療成績に差が出てくると予想されること。
以上、簡単に内痔核に対する新しい硬化療法剤について説明しましたが、脱出する内痔核の治療が可能な事、投与後の肛門の疼痛や出血が少なく患者さんへの肉体的負担が少ない事、施行時間が短時間(約10分前後)である事、日帰り治療が可能である事、など数多くのメリットがあり、日本でも本剤の発売後は内痔核の有力な治療手段の1つとなると考えられます。
そこで、本剤が我国で認可、発売後は、いち早く患者さんたちに投与できるように、その効果と安全性を高めるべく、2003年9月21日〜24日まで、当院の辻仲院長と松尾医師は、中国北京市の北京海淀長青肛腸医院・韓宝院長、北京中医薬大学第一臨床医学院東直門医院・趙
宝明教授のもとを訪れ、『消痔霊』治療の技術習得と意見交換を行ってきました。
両病院では手術室で実際の投与法(中国では「四歩注射法」という、写真)の見学と注射の実習により、より効果的で安全性の高い注射法について学んできました。
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