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Dr.辻仲の大腸肛門病教室
 
第十三回 ピロリ菌感染による胃がん発症リスクの上昇について
人の胃にすみ着く細菌ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)に感染したことがある人は、全く感染したことがない人に比べ、胃がんになるリスクが10倍に跳ね上がることが、全国4万人余を対象にした厚生労働省研究班の大規模疫学調査でわかったという発表がありました。ピロリ菌と胃がん発症との因果関係が一段と濃厚になってきました。今回はこのピロリ菌の記事をご紹介します。
90〜95年に全国10地点で40〜69歳の男性約1万5300人、女性約2万6700人に血液を提供してもらい、経過を追ったところ、04年までに512人が胃がんになった。保存血液でピロリ菌感染を調べ、胃がんにならなかった人と比べた。
その結果、採血時にピロリ菌陽性の人たちの胃がん発症リスクは、陰性の人たちの5.1倍だった。
菌の感染で胃炎が進むと、胃の中の環境が変わり、ピロリ菌がすみにくくなる。こうした場合は陰性に含まれてしまうため、研究班が他の指標も併用して採血時までの感染歴の有無で比べると、感染歴のある人たちが胃がんになるリスクは感染歴のない人たちの10.2倍に達した。
ただ、ピロリ菌感染歴があっても胃がんを発症するのはごく一部とみられる。
研究班によると、抗生物質でピロリ菌を除去しても胃がんを防げるかどうか、現段階でははっきりしていないという。除菌は現在、胃や十二指腸潰瘍に限って公的保険が適用されている。
研究班の笹月静・国立がんセンター予防研究部室長は「除菌も選択肢の一つだが、現時点では喫煙や塩分の高い食事など、がんの危険を高める生活習慣を改めることがより大切だ」としている。
■出典

内容は、2006年9月5日 朝日新聞朝刊の記事をまとめたものです。
■結論

ピロリ菌感染と胃がんのリスクの関係が明らかになってきましたが、予防のためにはピロリ菌の除菌だけでなく、喫煙や塩分の高い食事など、がんの危険を高める生活習慣も改善していかなければなりません。
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