お福御灸図(白隠作)
|
|
江戸時代以前で、痔をテーマにした図絵がいくつか残されています。このうち平安時代の病草紙の中の「痔瘻の男」(国宝)が最も有名ですが、この白隠慧鶴の「お福御灸図」という画賛もよく知られています。
賛には、「痔有るを以てたつた一と火」と書かれています。
この画賛は、お福さんが痔の病を治そうとして、お灸をしている図です。
寺小屋の教科書に用いられた『実語教』の冒頭に「山高きが故に貴からず。樹有るを以て貴しとす。人肥えたるが故に貴からず。智有るを以て貴しとす」とありますが、そのうちの「智有るを以て貴しとす」をもじったものになります。
「智」を「痔」に置き換え、「たった一と火」はお灸のことか。なお、「たつた一と火」は、「タッタヒトヒ」ではなく、チャキチャキの江戸弁で「タツタシトシ」と読む、語呂合わせ。
男の着物にある「金」印は何か。物質的欲望の追及を象徴とする「金々」です。お福は、お多福女郎で、白隠は、この女性を美醜を超えた存在として描いています。お多福の着物には「寿」の字が書かれていて、「寿」はイノチナガシと読みます。永遠の生命です。お多福に寿、つまり「福寿」の象徴になります。
そんな金々野郎の根本の病を治療しようとして、お灸をすえているのでしょう。
|
白隠慧鶴(1685〜1768年)は、江戸中期に出現した禅僧で、「臨済宗中興の祖」と呼ばれています。白隠は、膨大な著作群、さらに大量の禅画、墨蹟を残しています。
参考文献:「別冊太陽 日本のこころ203 白隠 衆生本来仏なり」 平凡社 2013年1月
|
|
お福御灸図 国会図書館書館デジタルコレクション
「白隠墨蹟」草村松雄編1922年から転載 |
|
|
|
|
|