コンパクト版
江戸川柳
江戸川柳と痔
 
江戸時代につくられた古川柳で痔を題材としたものは、少なくとも50句程度はあります。その多くは、艶笑的なものや男色と結びつけたものなどですが、このダイジェスト版は、それ以外の句について解釈を引用しながら、少しだけ紹介します。(Part2詳細版では、艶笑的なものなども掲載しています。ぜひご覧ください。)


黒縮緬(くろちりめん)()くような痔持ちの屁・新一8
「(略)痔持ちの屁は、痛みが伴うために、少しずつガスを発して静かに静かに長々と放出する。一気に破裂的にはいかない。(略)」(江戸のおトイレ)

■後架からさて難産(なんざん)と痔持出る・安元義6 
「やっと排泄を終えてトイレから出て来た痔病みの男(女?)、痛みを堪えながら成し遂げた行為に安堵感を覚え、『さても、さても難産であった』と述べている情景である。(略)」(江戸のおトイレ)後架(こうか)は、トイレのこと。(下記の雪隠(せっちん)もトイレのこと。)

■雪隠に治兵衛は尻を抱えてる・筥四11
「『治兵衛』は『痔兵衛』と同義である。」(江戸のおトイレ)

■痔持の盗人たれるうち夜があける・樽八二11

■雪隠で蚊のいけにへに痔持なり・樽一一一12

■走り痔で裏衿(うらえり)を出す(けつ)の穴・新三六16
「という凄絶な写実的な句もある。『走り痔』は、出血を伴う痔であるとされるが、着物の『裏衿を出す』というのは、脱肛の様子を言う。(中略)諧謔(かいぎゃく)を通り越して、あまりにリアルである。」(江戸のおトイレ)

■びんずるをもちやげて痔持撫る也・樽三六10
「びんずるは、『賓頭廬』で不動の意の梵語の音訳。羅漢の一人。頭髪が白く、まゆが長い。その像を手でなでて祈ると病気が治るという。」(新明解国語辞典)今もお寺のお堂などによく置かれている。痔持は、持ち上げてお尻を撫でないといけない。

■痔の医者ハ諸人の尻で飯を喰ヒ・樽一〇〇150
「『咄し家は世間ンのあらで飯喰イ』という句もあるが、口ならぬ尻で飯を喰うというくすぐり。」(江戸の町医者)


参考・引用文献 「江戸のおトイレ」渡辺信一郎著 新潮社、「江戸の町医者」小野眞孝著 新潮社、「琲風柳多留全集 新装版」 三省堂 


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