コンパクト版
もじり百人一首
もじり百人一首 「痔もちの・・・」
 
江戸時代末に出版されたと考えられる「地口絵手本」(作者:梅亭樵父)という書物があります。この「地口絵手本」は、百人一首の下の句をもじり、それに絵を添えたものです。百首あるうちのひとつに、この「痔もち」が登場します。
地口というのは、広辞苑によると、「ことわざや成句などをもじって作った語呂合せの文句」とあります。

元の句は、菅家(菅原道真)の
「このたびは幣《ぬさ》も取りあへず手向山《たむけやま》紅葉《もみぢ》の錦《にしき》神《かみ》のまにまに」です。

この下の句をもじって、
「痔《ぢ》持ちのいしき紙《かみ》をもみもみ」
にしています。「いしき」は、「臀」で「お尻」のことです。

絵を見ると江戸時代のトイレ(後架、雪隠、厠などという。)に入った痔もちの男が、紙をもみながら座っている姿で、痛みに耐えながら、時間をかけて用を足そうとしている様子とも見えます。

ちなみに元の句の現代語訳は、
「この度の旅は、あまり急なことなので、前もって幣《ぬさ》の用意もできかねました。この手向山《たむけやま》の、錦《にしき》のように美しい紅葉を手向の幣《ぬさ》として神よ御心のままにお受けください。
幣:神に祈る時に捧げるもので、麻・木綿・布・紙などを細かく切ったもの。行路の要衝で道祖神を祭り、旅の安全を祈願した。」
となります。(講談社学術文庫「百人一首」1983年11月)

参考文献:太平文庫「もじり百人一首三種」 武藤禎夫編 平成八年正月

≪  ≫内は、ルビ
  

国立国会図書館デジタルコレクション
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