海外小説と「痔」 ヘミングウェイなど・・・
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「痔」という文字が記載されている小説は多数ありますが、今回は外国の小説のいくつかを紹介します。「痔」と書かれている部分を次に抜粋します。(一部原文表記と異なる箇所があります。)
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■日はまた昇る(ヘミングウェイ)
(略)
しかも観客は、痔瘻を患っているベルモンテがどうにか見せることができる三倍もの演技を要求した。だから観客は、一つ一つ裏切られたと思い、だまされたと感じた。そのためベルモンテは相手を軽蔑するようにますます顎を突きだすようになり、顔はますます黄色くなり、痔の痛みが増すにつれて動きがますますぎごちなくなった。
(略)
・日はまた昇る
明るい南国の陽光のもと、虚無と享楽の淵にただよう”失われた世代《ロスト・ジェネレーション》”の生態を描破した初期の代表作。
・アーネスト・ヘミングウェイ Ernest Hemingway (1899-1961)
『われらの時代』『日はまた昇る』『男だけの世界』『武器よさらば』『キリマンジャロの雪』『老人と海』などを発表、ノーベル文学賞を受賞。
新潮文庫「日はまた昇る」大久保康雄訳 平成12年5月から引用
ちなみに、ヘミングウェイは痔のために立って執筆していたと言われている。
■ふらんすデカメロン
(略)
しかしながら茲に、神様の御心からであろうか、それとも、この美しい娘の幸運とか、その両親の仕合せとか、或は双方併せての幸福とかを、嫉んで快く思わない運命の神の仕業であろうか、それともまた、その穿鑿は学者や医者に委せるが、恐らく秘密の原因や自然に起る理由によってであろうか、この娘は、一般に痔尻と称ばれておる不快極まる危険な病気に罹るという仕儀と相成った
(略)
而してこのために、以前にはその器量のよさと気立の優しさと淑やかさとで多くの人々に識られておった娘は、この痔尻という呪わしい病気によって満天下に有名になってしまったが、後に聞き及んだところによれば、とうとう娘はこの病から癒ったそうである。
・ふらんすデカメロン(サン・ヌーヴェル・ヌーヴェル)
さまざまな登場人物がおおらかに繰り広げる愛の賛歌─15世紀中頃のフランス封建社会にあって、この作品は、人間の自由解放を謳い、人間の本性を赤裸々に描いて、後代フランス文芸復興のさきがけをなした、不朽の傑作である。
筑摩書房「ふらんすデカメロン(上)」1994年9月から引用
■外套(ゴーゴリ)
(略)
さて、その或る局に、《一人の官吏》が勤めていた−官吏、と言ったところで、大して立派な役柄の者ではなかった。背丈がちんちくりんで、顔には薄痘痕があり、髪の毛は赤ちゃけ、それに眼がしょぼしょぼしていて、額が少し禿げあがり、頬の両側には小皺が寄って、どうもその顔いろは所謂【いわゆる】痔もちらしい・・・・・・しかし、これはどうも仕方がない!罪はペテルブルグの気候にあるのだから。
(略)
岩波文庫「外套・鼻」から引用
・運命と人に辱められる一人の貧しき下級官吏への限りなき憐憫の情に満ちた『外套』
同上から引用
・ニコライ・ワシーリエブヴィチゴーゴリ(1809−1852)
小説家・劇作家。『ネフスキイ通り』や『鼻』『外套』などのペテルブルグを舞台にした小説で幻想と現実の入り混じった独特の世界を確立した。プーシキンとともに、その後のロシア文学に与えた影響ははかりしれず、現代にいたっても多くの作家がゴーゴリを意識した作品を生み出している。
ロシア名作ライブラリー1「検察官」五幕の喜劇発行 褐Q像社 2001年5月 から引用
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