■「痔」の語源とは、中国における「痔」とは・・・ |
寺に入らないと治らない?
痛みのため神仏に頼る?
寺での修行は冷たいところに座るので?
やまいだれに寺というと「痔」はあの「お寺」に関係するものと想像してしまいます。しかし、仏教の寺院とは関係がないようです。インド・西域から中国に仏教が伝来する以前からこの「痔」は使われていました。
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まず、辞書を調べてみましょう。「寺」、「痔」、「峙」を学研「漢字源」から一部引用しましょう。
「寺」の意味としては、@仏教で、仏道の修行や仏事を行うところ。A庶務・雑用をとり扱う役所。解字としては、漢代に西域から来た僧を鴻■※寺コウロジという接待所に泊めたため、のち寺を仏寺の意味に用いるようになった。 ※月へんに盧
次に「痔」ですが、意味としては、肛門に出る病気の名。解字としては、痔=峙。じっとどまってとれない。
「痔」=「峙」とありますので、「峙」の意味も引用します。そばだつ。じっと動かないで、まっすぐにたつ。とあります。
それでは、中国における「痔」から語源を考えてみましょう。
中国における痔疾患に対する認識は、夏商の時代(紀元前21〜11世紀)に遡り、当時の甲骨文字のなかに痔疾患についての記載があります。西周の時代(紀元前11世紀)の「山海経」に最も早く「痔」の病名が出てきます。
そして、「痔」という文字については、中国において二つの解釈があります。
ひとつは、「痔」は「寺」に同じくし、そして「寺」の字は古代では移行、変遷の意味を有し、この世代とあの世代との境界地点を「痔」と称した。肛門部は人体内外の境界地で、それゆえ当該箇所の病変を「寺」あるいは「痔」とした。
もうひとつは、「痔」は「峙」に同じというもの。「痔」とい文字は、「そば立つ、じっととどまる、峙」の意から由来し、はじめは「痔」とは各種の突出した病変を包含していました。例えば、腹中痔、鼻中痔、歯痔、舌痔、眼痔、耳痔などがあります。しかし、宋時代頃から肛門のものに限られるようになったとのことです。なお、「峙(そえやまい)」と表記する文献もあります。
参考文献:
永井書店「実地医家に役立つ肛門疾患の知識」土屋周二ほか編集(平成7年1月)
医学書院「大腸肛門ハンドブック」辻仲康伸監修(2011年7月発行)
直腸肛門病学会誌「痔の名称並びに異名」山本八治(8:1、1951)
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