運命と人に辱められる一人の貧しき下級官吏への限りなき憐憫の情に満ちた『外套』
岩波文庫「外套・鼻」ゴーゴリ作、平井肇訳 2006年2月16日改版第1刷のカバーから引用
[著者]ゴーゴリ(1809−1852)
小説家・劇作家。ウクライナに生まれ、帝政ロシアの首都ペテルブルグに出て下級官吏となりながら作品を書く。ウクライナを舞台にした作品集『ディカーニカ近郊夜話』で文名を高め、その後『ネフスキイ通り』や『鼻』『外套』などのペテルブルグを舞台にした小説で幻想と現実の入り混じった独特の世界を確立した。プーシキンとともに、その後のロシア文学に与えた影響ははかりしれず、現代にいたっても多くの作家がゴーゴリを意識した作品を生み出している。日本文学においても二葉亭四迷、芥川龍之介、宇野浩二、井伏鱒二から後藤明生へとその影響は脈々と流れている。
ロシア名作ライブラリー1
「検察官」五幕の悲劇
発行 褐Q像社
2001年10月8日
のカバーから引用
■外套
「痔」と書かれている個所を抜粋します。
(略)
さて、その或る局に、《一人の官吏》が勤めていた−官吏、と言ったところで、大して立派な役柄の者ではなかった。背丈がちんちくりんで、顔には薄痘痕があり、髪の毛は赤ちゃけ、それに眼がしょぼしょぼしていて、額が少し禿げあがり、頬の両側には小皺が寄って、どうもその顔いろは所謂痔もちらしい・・・・・・しかし、これはどうも仕方がない!罪はペテルブルグの気候にあるのだから。
(略)
他ならぬ己れの同僚たち口性ない連中の言い草ではないが、胸にはホ具、腰には痔疾に過ぎなかった。
(略)
同上岩波文庫「外套・鼻」から引用
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