[著者]大町桂月 おおまち けいげつ (1869−1925)
高知県生まれ。詩、文藝時評、随筆、教育時評、評論、紀行文その他を執筆した。 桂月は、もともと無二の旅行好きで、山岳、河川、湖沼、海岸、田園、原野等々、いたるところにその美を発見し、その景勝を人びとに知らせようとした。 ことに彼がもっとも愛したのは十和田湖、奥入瀬の渓谷であった。はじめてここの自然美に接したのは、明治四十一年(1908年)八月、鳥谷部春汀、平福百穂と同行しての旅行においてであった。 その生涯は、酒と旅を愛した、気骨ある明治文人の一典型と評することができよう。
筑摩書房「明治文學全集94 明治紀行文學集」 昭和五十八年十月一日初版第三刷発行 著者代表饗庭篁村 の略歴から一部引用して作成 旧字は一部改めてあり、原文表記と異なる個所があります。
また、与謝野晶子の「きみ死にたまうことなかれ」に対し、非難したことでも知られています。
痔の記述のある個所を引用します。
■「十和田湖」
(略)
三十一日朝、昨日の一行、船に乗りて、宇樽部を発す。春汀ひとり留る。持病の痔起りて出血甚しきをも顧みず、勇を鼓してわれらの為に山にのぼりけるが、この日一日は、静養せむとすれば也。十和田の景は、その熟知せる所なれば也。旧知三浦泉八氏との話も多ければ也。
(略)
同上「明治文學全集94 明治紀行文學集」から引用 旧字は一部改めてあり、原文表記と異なる個所があります。
|