【著者】 筒井康隆 Yasutaka Tsutsui
1934年、大阪市生まれ。同志社大学文学部卒。60年、家族で発行したSF同人誌〈NULL〉から江戸川乱歩によって短篇「お助け」が〈宝石〉に転載されデビュー。以後、日本SF第一世代の中核を担う人気作家として多彩な活動を続けている。代表作に『東海道戦争』『時をかける少女』『七瀬ふたたび』『虚航船団』『旅のラゴス』など。『嘘人たち』で第9回泉鏡花文学賞、『夢の木坂分岐点』で第23回谷崎潤一郎賞、短篇「ヨッパ谷への降下」で第16回川端康成文学賞、『朝のガスパール』で第13回日本SF大賞、『わたしのグランパ』で第51回読売文学賞を、それぞれ受賞。アンソロジスト、マンガ家、劇作家、俳優としても活躍。
「筒井康隆、自作を語る」 筒井康隆著 早川書房 二〇一八年九月二十五日発行から引用
■現代語裏辞典
言葉遊び、ナンセンスギャグ、ブラックジョーク、豆知識などに満ちたこの「現代語裏辞典」
辞典に掲載されている12,000項目中から、痔、肛門、大腸、大便、便秘、屁、お尻などに関連する91項目を選んでみました。
アナルがくは【アナル学派】人間の精神は肛門に宿るとする学派。
うんこ 消化器系の出産。
おえつ【嗚咽】便所における泣き方。
かつやくきん【括約筋】笑うと緩み、パンツを汚す原因となる筋肉。
かんちょう【浣腸】肛門を使用する自慰行為。
きくざ【菊座】不敬にも肛門の周囲に彫られた菊の御紋。
きれじ【切れ痔】大声で唸って大便すること。
くそ【糞】ソーセージの本来の内容物。
くそぶくろ【糞袋】人体のこと。ひどい便秘の人がわが身のことを言ったに違いない。
けいしつ【憩室】ウンコが休憩する部屋。
げざい【下剤】これで効かなければ指掘、それで効かなければ浣腸、それで効かなければ切開ということになる。
けっちょう【結腸】すでに消化されている食物から、さらに貪欲に水分を吸収する大便製造の最終工程。
けつべん【血便】新聞連載を三つやると出る大便。
けつれつ【決裂】切れ痔のこと。ケツはもともと裂けてはいるが。
ごうせい【合成】大便に熱を加えてヤケクソにするのも合成である。
こうもん【肛門】体内に満ちた汚物の一挙流出を防止する器官。
ざやく【座薬】肛門を性感帯に変える薬。
じ【痔】男色行為の障害となる疾病。
ジキルはかせとハイドし【ジキル博士とハイド氏】痔切る博士がハイド氏のおいどを切る話。
しさつ【刺殺】肛門から焼けた針金を突っ込まれて死んだイギリス王がいた。
しものせき【下関】肛門のこと。
じゅうしん【重心】便秘の人は下にある。
しゅくべん【宿便】便器に盛りあがり尻をおしあげるほどの大便。
しょうか【消化】食べ物を大小便に変えること。
じろう【痔瘻】⇒下村湖人「痔瘻物語」を読め。
ストロー【straw】蛙の尻に突っ込み、息を吹き込んで破裂させる道具。
せっぱく【切迫】どの便所も掃除中。
せっぷく【切腹】大便を直接腸から出す術。
せまきもん【狭き門】肛門のこと。
そあく【粗悪】お尻にやさしくないトイレットペーパー。肛門括約筋が千切れたりする。
そうは【掻爬】浣腸の一種。
そこぢから【底力】脱腸やぎっくり腰を招く力。
ソフトクリーム【soft cream】大便に似せて盛りつける食べもの。
たいおん【体温】直腸内の温度。
だいしょうべん【大小便】これ以外に下半身から出すのは、男は精液、女は赤ん坊。
だいちょう【大腸】下痢や便秘によって存在を主張する器官。
だいべん【大便】もとは食べもの。
たいめん【体面】満員電車で大音響の放屁に及んだ奥様が、罪をわが子になすりつけること。
だげき【打撃】腹にあたえられた場合、強ければ内臓破裂、弱ければ屁が出るだけ。
だっちょう【脱腸】蛙の腹を踏んづけた時の状態。
だっぷん【脱糞】あまりの恐ろしさによる急激で大量の排便。
たぬき【狸】さいころに化けるとピンは肛門。
だんどり【段取り】下着を脱ぎ、便器のふたを取り、腰掛けてから排便すること。
ダンプ【dump】おならを断つこと(断プー)。
だんやく【弾薬】座薬のこと。
ちょうづめ【腸詰】大便が詰まっていたりして。
ちょうへいそく【腸閉塞】唯一、口から大便を吐く病気(吐糞症)
ちょくちょう【直腸】膣の代用にされる場所。
つうかい【痛快】切れ痔の痛みと排便の快感。
ところてん【心太】便秘が治りそうな食物。
とびひ【飛火】直腸癌が喉頭癌に転移すること。
とふんしょう【吐糞症】自分の腸を上へねじりあげた時の症状。
トランペット【trumpet】肛門と同じ原理で鳴る楽器。
どろみず【泥水】下痢をするのに適した飲料。
なんべん【軟便】下痢の際に放屁すると薬味として小量排泄される。
にゅうもん【入門】肛門に入れること。
のぐそ【野糞】人間のものである証拠は、上におかれたティッシュペーパー。
のたれじに【野垂れ死に】立ち小便または野糞を垂れているさなかに死ぬこと。
ばくだん【爆弾】爆撃機の大便。
はさみうち【挟み撃ち】前門の男根、肛門にも男根。
バニラ【vanilla】高貴の美女の大便の香り。
バリウム【barium】大便の原形保存用造影剤。
びみ【美味】珍味も含め、いずれすべては大便。
びんづめ【瓶詰め】いったん詰めてしまえばピーナッツバターと大便は区別できない。
ふようい【不用意】ズボンを脱ぐ間もなく大小便をしてしまうこと。
プレゼント【present】 幼児の脱糞は母親へのプレゼントである(フロイト)。
ふんき【奮起】便意に促されて起きること。
ふんしゃ【噴射】下痢。からだが宙に浮く。
ふんしゅつ【噴出】吐糞症。
ふんせん【奮戦】大量の犬の糞の清掃。
ふんとう【奮闘】便所でいきむこと。
ふんにょう【糞尿】野菜を育て、寄生虫を媒介する肥料。
ふんべん【糞便】おいしいよ。
ぶんべん【分娩】排便と同じ快感があればいいのに。
へ【屁】満員のエレベーター内での爆発音。
へいもん【閉門】排便を終え、肛門を閉じること。
へりくつ【屁理屈】大腸菌が呟いている。
べんい【便意】けんめいに堪えている女性に一発ギャグを見せれば大洪水。
べんぴ【便秘】自分で腸詰めをつくること。
ぼうぜん【茫然】痔疾。
ほうひ【放屁】ガス抜き。
ほうべん【方便】四角いうんこ。
ポリープ【polyp】医者の口癖「すぐ切除しないと癌になります」
ほりごたつ【掘炬燵】屁の溜まり場。
マヨネーズ【mayonnaise】出口には肛門の菊座がついている。
みおも【身重】便秘。
みつゆ【密輸】ヘロインの腸詰めを腸に詰めて税関を通過。
むしくだし【虫下し】肛門からうどん玉を出す薬。
モータボート【motorboat】痔疾の人には向かない舟。
ヤヌス【janus】肛門にも顔あり。
一部原文と表記が異なります。
文藝春秋「現代語裏辞典」筒井康隆著 2010年7月30日発行から引用
|