疲れるのは健全である徴。病気になるのは生きている証。サクセスモデルへの幻想を棄てて、「1ランク下の自分」を目指しませんか? ささやかなことで「幸せ」になれるのは1つの能力です。まずは身体の内側から発信される信号を聴き取ること。真の利己主義を目指すこと。礼儀作法と型で身を守ること。家族の愛情至上主義をやめること─。今最も信頼できる哲学者が、日本人の身体文化の原点に立ち帰って提案する、最強の幸福論。解説・銀色夏生
角川文庫「疲れすぎて眠れぬ夜のために」内田樹著、平成二十二年五月十五日第十一版発行 のカバーから引用
[著者]内田 樹 1950年東京生まれ。神戸女学院大学文学部教授。東京大学文学部仏文科卒。都立大学大学院博士課程(仏文専攻)中退。専門はフランス現代思想、武道論、映画論など。古武道とフランス現代思想に精通した独自の視点で注目を集める。著書に『「おじさん」的思考』(昌文社)、『死と身体』(医学書院)、『先生はえらい』(ちくまプリマー新書)、『下流志向─学ばない子どもたち 働かない若者たち』(講談社)、『街場の中国論』(ミシマ社)、『態度が悪くてすみません─内なる「他者」との出会い』(角川oneテーマ21新書)等多数。『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)で2007年小林秀雄賞受賞。
同上 「疲れすぎて眠れぬ夜のために」のカバーから引用
■疲れすぎて眠れぬ夜のために
「痔」と書かれている箇所を抜粋します。
T 心耳を澄ます
人はどうしてオヤジになるのか
(略)
逃げ場を見つけられず、そのまま不愉快な人間関係の中にとどまっているうちに、やがて「耐える」ということが自己目的化し、「耐える」ことのうちに自己の存在証明が凝縮されてしまったような人間ができ上がります。
世に言う「中年のオヤジ」というのは、この「耐えること」が劇的に人格化されたものだ、といってよいでしょう。
会社で上司の罵声に耐え、部下の暴言に耐え、クライアントのわがままに耐え、満員電車での長距離通勤に耐え、妻の仏頂面に耐え、セックスレスに耐え、子どもの沈黙の軽蔑に耐え、巨額のローンに耐え、背広の肘のほころびに耐え、痔疾の痛みに耐え・・・・・・といったふうに、全身これ「忍耐」からできているのが「中年のオヤジ」という存在です。
これはたぶん、どこかで「ボタンの掛け違え」があったせいだと思います。
(略)
同上 「疲れすぎて眠れぬ夜のために」から引用
一部原文表記と異なります。
|