「16歳で天才の名をほしいままにし、19歳で筆を断った早熟の詩人ランボーは、パリ・コミューンの渦中にその青春を燃焼させた天性の反逆児であった。ヴェルレーヌに偉大なる魂≠ニ絶賛された深い霊性と、今日の詩人たちにも新鮮な衝撃を与え続けるその芸術的価値において、彼こそ空前絶後の詩人と呼ばれるにふさわしい。本詩集には傑作『酔いどれ船』を含む代表作を網羅した。」
新潮文庫「ランボー詩集」 訳者 堀口大學 平成二十二年一月三十日 八十七刷
のカバーから引用
[ランボー(1854-1891)]
「北仏の小都市シャルルヴィル生れ。マラルメ、ヴェルレーヌと共にフランス象徴派・三大詩人の一人とされるが生前は無名だった。1873年頃に代表作『地獄の一季』を執筆するが、その後しばらく文学活動から離れるようになり、欧州各地を転々とした末、アフリカに渡って交易に従事する。1886年、詩集『イリュミナシヨン』を発表。ダダイスト、シュールレアリスト、実存主義者など、後の芸術家に与えた影響は大きい。」
同上 新潮文庫「ランボー詩集」カバーから引用
訳者[堀口大學(1892-1981)]
「東京・本郷生まれ。詩人、仏文学者。慶應義塾大学を中退し、10数年間外国で暮す。『月光とピエロ』に始まる創作詩作や、訳詩集『月下の一群』等の名翻訳により、昭和の詩壇、文壇に多大な影響を与えた。’79年文化勲章受章。」
同上 新潮文庫「ランボー詩集」カバーから引用
■ヴィナス水浴(ランボー詩集から)
(全文を引用します。)
ブリキ造りの緑のお棺さながらの
古ぼけた浴槽から、油でかためた栗色がみの女の首が
のっそりと、間抜けた具合に現われる
かくしも兼ねた脳不足はっきり見せて、
続いてくすんだ太い頸、大きく突出た肩甲骨、
凸凹だらけのずんぐり胴。
皮下脂肪、斑なく葉でも敷いたよう、
腰の太さは、今にも弾んで飛び出しそう。
脊柱は赤味を帯びて。一切が妙にこう
変な好みを思わせて。天眼鏡で見たいほど
奇異なるところがしきりに目立つ。
腰に二字彫りつけてある、「輝くヴィナス《クララ・ヴエニユス》」
─しかもこの肉塊が動き出し、大きな見事な臀をつん出す
いまわしいいぼ痔の見える。
同上 新潮文庫「ランボー詩集」から引用
一部原文表記と異なる部分があります。
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