■瀬見温泉
全国各地に、「・・・むし」、「・・・ふかし」といわれるむし湯がありますが、特に瀬見温泉はふかし湯、痔蒸しの温泉として、よく知られています。
○ 全国温泉大辞典には、次のように記載されています。
「小国川の亀割山(五九四メートル)、大焼黒山(七一五メートル)などを前後に置いた瀬見温泉は、その昔、源義経主従が平泉に落ちていく途中、随行した弁慶が、北の方の生んだ亀若丸の産湯を探して、大石を掘り起こしたところ、湯の湧出をみたと伝え、地名も弁慶の愛用のナギナタ「せみ丸」に由来するといわれている。
国道から橋を渡り、旅館とみやげ物店の並ぶ温泉街へ入っていくと、明治時代の御殿風の建物をみせる喜至楼の旧館があり、その横に湯前神社がある。神社前に源泉が湧いていて飲泉場になっている。
(略)
湯前神社の前が共同浴場。奥が二大老舗である瀬見グランドホテル観松館と喜至楼別館がある。(略)効能は、神経痛、リウマチ、火傷、婦人病、皮膚病などに飲用として胃腸病、便秘となっている。
瀬見は、昔から痔疾の名湯といわれ、痔むし風呂の「ふかし湯」が有名。湯船の上に穴のあいた板を敷きつめて、横になり穴を通して噴き出す湯気を患部に当てる。共同浴場にある。」
旅行読売出版社 「全国温泉大辞典」野口冬人著 一九九七年一二月八日発行
○ ネット情報では、・・・
瀬見温泉の最近の様子は、「瀬見温泉オフィシャルサイト」をはじめネットに多くの情報があり、詳しく紹介されています。
「瀬見温泉オフィシャルサイト」では、ふかし湯についても、「名湯『ふかし湯』【ふかしゆ】」として紹介されています。入浴中の写真も掲載され、「浴衣やバスタオルを巻き、穴から吹き出す湯気に身体を当てます。患部に当てるのが効果的です。」との説明もあります。
また、これもネット情報によりますが、2016年6月1日に、新装オープンしております。
現在の正確な情報を知りたい方は、「瀬見温泉オフィシャルサイト」などを見てくださいね。
また、川村学園女子大学 観光文化学科による瀬見温泉プロジェクトというものもあって、瀬見温泉についてFacebook、YouTubeなどで紹介しています。「ふかし湯」の動画、画像も掲載されています。チェックしてみてください。(すでにチェックされていましたか!)
なお、瀬見温泉のオフィシャルサイトなどによる公的なPRでは、この「ふかし湯」に関しては、「痔」又は「痔蒸し(むし)」という表現がありません。「痔」以外にも効能があるからなのでしょうが・・・。痔を前面に出すと、イメージがよくないということもありそうです。(当然ですが。)
○ 体験記
どちらかというと、体験記というより未体験記ということになるでしょうか。
私が訪れたのは、14年前です。
ふかし湯は、当時、町営公民館の中の共同浴場の一画にありました。そのときは、共同浴場もふかし湯も利用しませんでした。
共同浴場は、入浴者が少なくなく遠慮しました。また、ふかし湯は、逆に誰もいなくて、それに当時はあまり清潔感ががなく、やめました。わざわざ行ったのに、痔蒸しを経験しなかったのは、残念です。(今は後悔)写真だけは撮りました。このふかし湯は新しくなっているので、機会があればまた行きたいと考えていますが、少し遠いです。
宿泊したのは、喜至楼《きしろう》という旅館で、明治からの建物とのことで、建物、装飾その他がレトロで、しかもとても不思議な旅館でした。お風呂がいくつもありました。現在の様子をネットで見る限り、ローマ式のお風呂がそのままであったり、内部も外観も当時と大きく変わっていないようです。(この喜至楼についても、画像、動画がネットにいくつも掲載されています。)
喜至楼のウェブサイトに記載されている温泉の効能・適応症は、数多くありますが、そのひとつに、痔病が挙げられています。
記憶は定かではありませんが、この温泉は、確かに痔にもいいような気がしました。(前痔主)
以下、私が14年前に訪れたときの写真を今さらながらですが、掲載します。(せっかく訪れたので、・・・、未掲載のままなので・・・)2002年5月訪問。(2016年6月8日記載)
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瀬見公民館の中に、共同浴場、
ふかし湯がありました。
(以下、2002年5月撮影) |
「ふかし湯」の入口ドアに貼ってありました。
「痔・神経痛・婦人病・等に特効」と書かれていました。 |
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ふかし湯の内部(男女別にあった。) |
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ふかし湯の板の間。直径4センチ程の丸い穴が空いていて、ここから蒸気が上ってくる仕組み。穴の上にバスタオルを敷き、痔の場合は穴にちょうどお尻があたるように、浴衣のままで横になる。当たり前ですが、痔でない場合は患部にあてるということになります。 |
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正面から見た喜至楼 |
横から見た喜至楼 |
○瀬見温泉
JR陸羽東線(奥の細道・湯けむりライン)瀬見温泉駅から徒歩10分程度
■猫啼(ねこなき)温泉
福島県石川群石川町にある猫啼温泉。今出川のほとりに宿が立つ。
○猫啼温泉
猫啼温泉 式部のやかた 井筒屋のリーフレットには、次のように記載されている。長くなるが、全文を引用する。
「猫啼温泉の由来
今を去る千年の昔、平安中期の女流歌人和泉式部は、当地石川の在に生れ、少女の頃、この里にこんこんとして湧く、清水のほとりに来ては、水鏡で顔を洗い、髪を梳ることを楽しみとし、美しい乙女となった。
その時、式部が櫛を置くことをつねとした石を『櫛上げの石』と称し、今なお、当温泉地内に残っている。式部の美しさは遠近に聞え、一条天皇の御代に都に上り、情熱の歌人として、その名を後世に遺した。
故郷にとり残された、式部の愛猫は病み衰えていたが、式部を慕い、日毎にこの泉に来ては啼き、泉に浴しているうち病体は癒えて、美しい猫となった。猫を憐れんで見守っていた里人達は、はじめて泉が霊泉であることを知り、泉水を汲んで入浴したら、諸病に効顕があり、この里を猫啼と名づけ、湯治場を設けた。霊湯猫啼の名は年とともに広まり、特に痔・神経痛の名湯として今日に及んでいる。」
また、井筒屋のホームページには、上記の趣旨のほかに、次のことも記載されている。
「和泉式部は当地では『玉世姫(たまよ姫)』と呼ばれ、愛猫は『そめ』という名が付けられていました。」
この式部の愛猫の病とは何か。答えは、痔疾である。
井筒屋の大浴場の脱衣所の壁に、その記載がある。
以下、こちらも長くなるが引用する。
「猫啼温泉の由来
今を去る千年の往時、一条天皇の御代平安中期の女流歌人として其の名を萬世に残せし和泉式部が京に上りし折、此の地に至り滾々と湧き出ずる清水を見つけ髪などを梳り、旅の疲れを癒したり、其の際櫛を置きし石を『櫛上げの石』と称し今なお猫啼温泉地内に残り居ると伝えられる。
又、旅のつれづれに連れ来たりし愛猫を置き去りしに、式部を恋慕の余り日毎に啼き続け、日一日と痩せ衰い朝な夕な通る狩人達の憐れみも一入なりきこれ猫啼の地名の由来なりと。
この猫は病体なりしに附近より湧き出ずる泉に浸り、数日にして重態なりし猫の痔疾は治り元気に快復したるとみた狩人達は試みに清水を汲みて入湯せしに其の効果の顕著なるに驚き、広く痔疾の人々に宣伝し其の霊効を今に伝え来る次第なり。」
それにしても、なぜ猫の病気が痔疾とは。
痔は、人間が直立二足歩行することによって生じた人間特有の病気と言われている。(しかし、一方で犬、猫にも痔が存在するとの説もある・・・。)
○小和清水(こわしみず)と和泉式部の生誕伝説
井筒屋のホームページには、次のように書かれている。
「石川町の曲木(まがき)という地区に『小和清水』と呼ばれる清らかな湧き水があります。
伝説では『この地方を治めた豪族、眞垣荘司安田兵衛国康の一子、玉世姫が産湯を浴びた清水』になっており、この玉世姫こそ、後の和泉式部であると・・言い伝えが残っています。
現在では、子育て・子宝の霊水として人々に親しまれております。」
しかし、和泉式部の生誕地と言われる場所は、この石川町だけでなく、全国のいくつかの地域にもある。ここも伝説のひとつということになる。
○体験記
猫啼温泉 式部のやかた 井筒屋に宿泊した。
県道118号線沿いに目立つ看板がある。そこが、猫啼温泉の入口。やや幅の狭い橋がすぐあり、そこを渡ると井筒屋がある。
旅館は、今出川と山との間に立っている。
浴場は、大浴場と露天風呂が男女各ひとつある。露天風呂は、大浴場の奥にある。浴場のタイル壁には、和泉式部と猫が描かれている。この和泉式部と猫の図柄は、少し異なるものもあるが、外の看板、建物の壁、お土産の包装紙など、あちこちに使われている。
夕食は部屋食が可能である。夕食、朝食ともにおいしい。
旅館の敷地内に和泉式部が使ったという「櫛上げの石」があり、旅館の方に案内してもらった。
平成28年8月27日訪問
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看板のところを曲がると、橋がある。
この橋を渡ると井筒屋。 |
県道沿いにあるちょっと目立つ看板。
和泉式部と猫の図柄が使われている。 |
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建物横には、やはり「和泉式部と猫」の図柄 |
正面入口 |
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正面入口のすぐ横。
「猫啼温泉の由来」が書かれている。 |
大浴場脱衣室の壁にも「猫啼温泉の由来」
猫の病気が、「痔疾」であることが書かれている。 |
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「和泉式部と猫」が大きく描かれている。この画像は、
湯気で不鮮明となっている。実物はもっと鮮やか。 |
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櫛上げの石 |
櫛上げの石 |
○式部のやかた 井筒屋 (以下、井筒屋リーフレット、ホームページから抜粋)
・小説。舟橋聖一氏の「ある女の遠景」や内田康夫氏の「十三の墓標」の舞台となった宿
・源泉温度/8.0C 性状/無色透明 本泉は単純弱放射能鉱泉(旧泉質名放射能泉)低張性─中性─冷鉱泉に属する。
・浴用の適応症/リウマチ性疾患、痛風及び尿酸素質、動脈硬化症、高血圧症、慢性胆道疾患、外傷後遺症、痔など。
・アクセス
JR磐城石川駅下車 車で3分
・住所
福島県石川郡石川町字猫啼22
■まんじゅうふかし
青森県八甲田山中腹にある酸ヶ湯温泉近くにこの「まんじゅうふかし」がある。
酸ヶ湯温泉から徒歩15分くらい、車で数分くらいのところ。国道103号線を挟んで、地獄沼の反対側、八甲田ホテルへの入口手前付近から入る。酸ヶ湯温泉でもらえる周辺地図に「まんじゅうふかし」の場所が記載されている。
「まんじゅうふかし」入口には、道路上に「ふかしゆ」と書かれており、また右側に案内板が立っている。
ここから先は、車は入れない。車で行った場合は、国道に路肩駐車することになる。国道から少し歩くと右に東屋が見えてくる。
東屋の中に2台の木製のベンチがある。東屋の先には、小川が流れている。
東屋のそばの案内板には、次のように記載されている。
『まんじゅうふかし
Manju-fukashi
中に95°Cの高温のお湯が流れる木の箱型のベンチの上に座ってお尻を温める東屋。
お尻をまんじゅうに見立て得た呼び名です。婦人病、冷え症、腰痛などに効果があります。ベンチの蓋から熱い蒸気がもれることがあるので、火傷に注意。
環境省』
ネット情報や温泉案内書には、「痔蒸し」の一種とも書かれていたり、痔疾にも効能があるとされている。残念ながら環境省の説明には、痔疾に効くという説明はない。痔蒸しというと山形県の瀬見温泉に現存しているように、床にある小さな穴から温泉の蒸気が噴き出ていて、そこに浴衣を着て床に寝ころんだりして、手拭などで温度調整しながら、痔などの患部に蒸気を直接あるいは間接的にあてたりする方式であったりする。
しかし、ここのふかしゆは、着衣のままベンチに腰かけて、蒸気にあてることなくお尻を温める方式になる。
この東屋やベンチは、小ぎれいに整備されていて躊躇なく座ることができる。実際にベンチに座ると、お尻がよく温まる。
ちなみに、まんじゅうふかしの意味については、もちろん食べるおまんじゅう(お饅頭)を蒸かすという意味ではない。米川明彦編著「日本俗語大辞典」によると「まんじゅう(饅頭)」は、女陰の意とある。また、ネット情報などによると青森県、秋田県などの方言で、女性器を意味する言葉でもあるらしい。環境省の説明とは相違する。どれが正しいのか。
また、「子宝の湯」、「若返りの湯」とも呼ばれているそうだ。
平成30年6月24日訪問
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まんじゅうふかし入口 |
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ふかし湯入口 |
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まんじゅうふかし説明版 |
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東屋 |
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東屋 |
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屋根の下に「まんじゅうふかし」の看板 |
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木製のベンチ |
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