痔の散歩道 痔という文化

ヒポクラテス全集
ヒポクラテス
ヒポクラテスは、古代ギリシャ(紀元前460年?〜377年?)の人で、「医学の父」「医聖」などと言われています。医師の職業的倫理規範である「ヒポクラテスの誓い」が有名です。

ヒポクラテス全集には、約60の論文があり、約5世紀にまたがって書かれたものと推定されています。また、ヒポクラテスの名で伝えられている全集のどの部分が彼自身によるものなのか不明といわれています。ヒポクラテス学派の全集といえます。このうち2編が「
」に関するものになっています。
このヒポクラテス学派にとって病気とは身体に生来備わっている自然治癒力と健康を脅かす力の戦いで、体液の質と量によって健康が左右されるという体液病理説をとっているそうです。

参考:小川鼎三他訳「図説医学史」


ヒポクラテス全集から「痔核」と「痔瘻」編を引用します。


■第四十三編 


 一             
 
痔核は次の如くにして起る。胆汁或は粘液が肛門にある血管に滞積するときは、其れが此の小血管の中に含まるゝ血液を温める。此の血管が温められると、之に最も近く存在する血管から血液が戸々に茲に引寄せられて、初めの血管が充実を来たし、肛門の内側に一つ膨隆せる腫瘤が出来る。そして一方放出する糞便に依つて挫滅せられ、他方集積せる血液に依つて梗塞せらるゝときに出血を起す。特に出血は排便に伴ふて起ることが多いが、屡々又排便を伴はずして起ることもある。

 
 本疾患の治療は次の如くにせねばならぬ。第一に如何なる場所に
があるかを知ることである。吾人は肛門を切開することも出来る。之を切取ることも出来る。之に縫合を施し、又烙鉄を以て焼灼することも出来る。之を結紮して其の一部を脱落せしむることも出来るものである。是等の処置が何等の障害をも惹起せずに成功することは困難である。自分は一指尺(0・二二二粍)の長さの、太く丈夫な、一端が曲つてゐて而も其の先端が一「オボロス」貨幣位の平たさになつてゐる鉄製の消息子七八本を取り、前日に肛門を下剤を以て清掃し置き、患者に背位を取らしめて枕を腰の下に当て、指を以て肛門を出来るだけ広く拡げ、その鉄を白熱して全く乾燥して了ふ迄之を焼く。そして之に触れることなからしむる様に保護する。ただ一つの血管も残すことなく全部を焼き尽すのである。
 此の血管結節は容易に認知することが出来る。其れは肛門の内側に於て、蒼白色の隆起を形成し、恰も葡萄状を呈してゐる。而して肛門を開けば血液が流出する。此の焼灼中は助手が患者の頭と腕とを抑へて動かさぬに様にする。此の間に患者が叫声を発すれば肛門は益々膨出する。焼灼後に於ては、野豌豆を水で煮て之を細かく摺り潰し、其れを五六日間貼布する。七日目に於て軟い海綿をなるたけ薄く円盤状に切る─海綿の大さは各径共に六指横径にする─其処で此の海綿の上に同じ大いさの圧抵を乗せ、其れを薄く滑かにし且つそれに蜂蜜を塗る。左手の示指を海綿の真中に当て、之を出来るだけ深く肛門内に挿し込み、尚海綿の上には毛布を当てゝ、肛門内に於て動かずに固定されてゐる様にする。横腹に繃帯を掛け、後其の下に一本の帯を通し、之れを股間を通して臍部の処で結ぶ。繃に依つて固定せられたる此の治療薬は、肉質を増殖せしめて抵抗を強くするの作用あるものである。臀帯は少くとも二十日間掛けて置かねばならぬ。患者には一日一度、穀粉、粥、黍或ひは麦糠を煮たものを食べさせ、水を飲ませる。上厠に際しては温水を以て洗ひ、三日毎に温浴をとらしむる。

 
 
治療法其二
。肛門を出来るだけ拡げて温水を之に注ぎ、の尖端を切り去る。切る場合には、予め次の薬を用意して置く。患者をして銅器の中に放尿せしめ、其の尿の中に出来た緑青を集めて、之を摺潰して溶かし、銅器を振盪して日光で乾燥せしめ、その乾燥せるものを掻き集めて之を更に細かく摺つて、それを肛門に当てるのである。其の上にオリーフ油を塗したる圧抵帯を施して、其れに尚海綿を当てゝ固定する。

 
 治療法其三。翻瘡の如くに血管が拡つて其処に苺の様なものが出来る。若し此の翻瘡が甚しく突出するときは其の周囲に肉から成る処の被覆が出来る。患者をして膝を突かせて尻の間を検査する、そうすれば肛門の周囲の部分が腫脹して、血液が内から外の方に出て来るのを見得る。此の翻瘡が被覆の下で軟化すれば指を以て之を取り去る。之れは指を羊の皮と肉の間に押当てゝ、皮を剥ぐときよりも容易である。吾人は話しながら患者の知らぬ間に之を為すことが出来る。此の翻瘡を除去せる後は、血液が当然その剥脱面に流出する。之を吾人は没食子を浸した渋い葡萄酒で洗ふ。血管は翻瘡と共に無くなり而して被覆が再び生ずる。病気が古ければ古い程治療が容易である。

 
 此の翻瘡が深く上方に存在すれば直腸鏡を用ひて検査するが、其の際誤認なき様よく注意せねばなぬ。鏡が開けば其の翻瘡を平たくするが、其れをつぼめると又顕著となる。吾人は翻瘡を除去し、肛門には東洋の藜蘆根を塗り、而して三日目に渋い葡萄酒で洗ふ。又翻瘡を除去したる際出血を起さなくとも驚くことはない。吾人が腕或ひは膝を関節の処で切つても、唯微かに出血するに過ぎ無いことがある、処が関節の上で切断すれば、多くの出血があるから、止血することが容易でない。
に於ても同じ訳であつて、翻瘡の発生部の上下では出血するが、其の発生部には出血は起らない。斯くの如くして出血を止めばよろしいが、若し止まなければ、絡鉄を以て患部に直接触れしめず、ただ之に近付けて乾かす様に焙り焼き、其の上尿器に依つて製せる緑青をつける。

 
 治療法其四。一本の管を取つて之に良く当嵌る鉄棒を用意する。管を肛門内に挿入し、鉄を白熱して之を管の中に押込み、又それを引抜く。之は患者をして熱に耐えしめんが為である。斯く如くすれば一方に於て熱の為めに傷付かず、他方其れに依つて小血管が治癒するのである。

 
 焼灼も切除をも欲しないときには、吾人は先づ多量の温水を注いで肛門を外の方へ翻転し、そして没薬と没食子を粉末とし、之に埃及明礬を焼いて、一・二分の一の割合に加へ、更に同量の靴墨を入れ、是等を乾燥状態のまゝ用ふる。
は此の薬に依つて恰度焼けた皮膚の如くに脱落して来る。之を全体が無くなるまで続ける。二分の一の焼いたカルキチスにも同様の効がある。

 
 若し肛門坐薬に依る治療を欲するならば、烏賊の脊殻と三分の一のモリブデーナ、アスファルト、明礬、少量の緑青、没食子、少量の酢酸銅を取り、之に煮た蜂蜜を注いで長い坐薬を造つて入れ、そして
が全く消滅するまで放置する。

 
 婦人に於けるの治療は次の如くにする。先づ多量の温水を灌注する、此の温水には香の良い野菜を一緒に煮る。■柳(かわらやなぎ)、焼きたる黄色酸化銅を加へ、之等を相互に良く摺混ぜ、洗へる後に塗擦する。吾人は充分に肛門を拡げた後之を良く洗ふべきである。


■第四十四編 痔瘻

 
 
痔瘻は挫滅と腫瘤との為めに起る。然し又漕艇、乗馬等により、血液が肛門部に集つた場合にも起る。若し血液が腐敗性なれば、肛門は湿性にして且つ肉が軟であるから其の腐敗を起して来る。そして此の腐敗が起ると、瘻孔が出来て之より腐敗性の液体が流れ、糞便も亦之を通つて出る。風気が其の為に甚しき臭気を発する。又肛門の囲りの部分が打撲を受けるとか、損傷を受けるとか、乗馬とか、漕船とか云ふことの為、或ひは其の他の誘因から挫滅を受けたときには、其の為にも本疾患は起る。此の場合には血液が滞積して腐敗化膿性となる。化膿の為に患者は腫瘤に類似せる病患を起す。

 
 第一に此の腫瘤が出来るや否やなるだけ速に、未だ熟せずして肛門に化膿が起らない以前に、之を早く切除することが大切である。

 
 若し既に
痔瘻の出来た患者に出会へるときには、患者を仰臥せしめ脚を開かしめて、蒜の茎を取つて此の茎が突き当るまで瘻孔に挿入して其の深さを測る。而して当帰の根を出来るだけ細く切つて之に水を注ぎ、四日間之を放置してをく。患者をば先づ絶食せしめ、此の水に蜂蜜を混ぜて三「キアトス」(0、126立)の量まで飲用せしむる。此の機会に於て回虫も亦同時に駆除すべきである。総て是等のことを放任して置けば患者は死ぬまでのことである。斯様に処置した後上等のリンネル繃帯にタカトウダイに浸してあてる。其の上に細かい焼いた緑青を散布し、瘻孔と同じ長さの綿繖糸を造り、玉葱の茎を用ひて之を挿入する、そのとき患者には背位を取らしめ、肛門鏡で蚕食部位を検査して之を通すのである。茎が肛門内に現るるや否やそれを掴み、綿繖糸が瘻孔を通過して其の上下の縁に於ててそれが同じ長さになるまで之を引く。それを通した後坐薬を肛門に挿入するのであるが、前以て肛門を晒粉で摩擦してをく、斯くして放置して置くのである。
 患者が便所に行くときは其れを引出し、後に再び之を挿入する。斯くして五日間続ける。六日目に之を引出す、其の際に綿繖糸を肉の部分から引出す。其の上明礬を擦つて之を坐薬として肛門の方まで挿入する。そして明礬が溶解するまで放置して置く。外観上癒着し了る迄直腸に没薬を塗る。

 
 治療法其三。生の亜麻のなるべく細い繊維を取つて、之を凡そ一指尺の長さに五度折重ねて、それを馬の毛と一緒に撚る。其の上で一端に耳の付いた錫製の消息子をとり此の耳の処に撚つた繊維をつけて之を瘻孔内に押し込み、同時に左手の示指を肛門内に押し入れ、消息子が指に触れたならば直ぐに消息子の端を指にて曲げそして之を引くと同時に消息子の端に着いてゐる糸の端を引き出す。次に消息子を再び引出して了ひ、其の繊維の両端を二三度結び残つてゐる繊維の端を復た撚て之を結び目の近くに固定する。然る後に患者をして業務に就かしめる。
 瘻孔が腐敗する結果として亜麻繊維が弛んでくる間は、毎日間断なく引張つて結ぶ。瘻孔が全く蚕食さるゝに至る前に亜麻の繊維が腐れば、其の馬の毛に新たに亜麻の繊維を結んで之をまた結ぶ。馬の毛は腐らずに残るものである。瘻孔が蚕食されたならば直ちに軟かい海綿を出来るだけ薄く円盤に切つて之に当て、其の上消息子を以て、多量の焼いた緑青を瘻孔内に挿入する。海綿には蜂蜜を塗つて、左手の示指を其の真中に当てゝ之を挿し込み、他の海綿を又其の上に当てて之を
の場合と同様に繃帯で固定する。翌日繃帯を去つて温水で其の囲りを洗ひ、左手の示指を以て海綿で瘻孔を掃除し、再び新たに緑青をつけて繃帯する。斯くすること七日間にして多くは瘻孔の膜が腐るが、此の繃帯は更に患者が全快するまで続ける。若し瘻孔が斯くの如き方法で海綿の為に開いたままでゐると、其れは再び収縮もせず、又癒着も起らない。又併し新たに肉を以て充されて癒着するものもある。此の処置の間温水を以て洗ひ、而して厳密なる摂生法を命ずべきである。

 
 之に反して瘻孔全部が蚕食されないときは、先づ消息子を以て検査し、それが通る点まで切つて、其処に緑青を散布して、これを五日間放置する。温水を以て良く洗ひ、碾割の穀粉を水で掻き廻して其れを上にかけ、そして甜菜の葉を繃帯を以て固着せしめる。緑青が落ちた後には瘻孔の傷が綺麗になる。本治療法は前例に於けると同様になすべきである。

 
 若し瘻孔が小さい切開を為し得る場所に出来たとき、及其れが深いときは、吾人は緑青、没薬及び曹達を尿に溶かして之で洗ふ。そして瘻孔の口には鉛の棒を嵌めて置いて、其れが固着せぬ様に計る。羽の茎に膀胱を結び着けて之を瘻孔に挿入して洗ふのである。之れでも尚癒らずして、更に刀刄を用ひる治療法を要することもある。

 
 肛門が炎症を起して、疼痛、発熱を有し、屡々便通あるも排泄なきとき、又直腸が炎症のために脱出して場合に依つては尿意頻数の感を持つとき、これらの病は身体から来る粘液が肛門に於て固着した場合に起るのである。温める作用ある薬が此の場合に効く。之を用ふれば粘液を薄めて之を融かし、同時に又塩辛いものと辛味のものとを水様に溶かし、そして熱感も疼痛もない様になる。吾人は又次の治療を施す可きである。即ち患者を温水の中に入れ、六十個のオニシバリの実を摺つて是を一「コチレ」(〇二五三立)の葡萄酒及び半「コチレ」(〇一二六立)のオリーフ油に浸し微温にして之を以て洗ふ。是等の物質は粘液と大便を外方に誘導する。温浴を取らぬ間は、黒い芳香葡萄酒の中でうでた卵を肛門の上に当て、何か温まるものを下から当てる。之には温水を膀胱に充して用ふるか、或ひは炒つた亜麻の種を摺つて粉にし、同量の穀粉と黒色芳香性葡萄酒及びオリーフ油に混じ、之を出来るだけ熱して罨法として用ふる。或ひは大麦又は搗砕いた埃及明礬を之に加へて長い坐薬を造る、即ち火に当てゝ軽く温め、指で以て一定の形となし其の上微温状態として肛門に当てる。外の方には蝋軟骨の塗擦を施し、而して黒い希釈した葡萄酒で煮た蒜を当てる。其れを再び引出したときに、患者に坐浴を取らしめて、イヌホヽヅキの汁、鵞鳥と豚の油、クリソコルラ、樹脂及び白蝋とを一縮に溶し混ぜて其れを塗擦する。炎症のある間は温かい蒜で罨法を施す。疼痛が之れが為めに駆除せらるればよし、若し駆除されぬときには白色のメコニオン(タカトウダイの一種)を飲ます。又他の場合には粘液を排泄する他の薬剤を用ふる。炎症のある間は食物として軽い病人スープを用ふる。

 
 利尿困難は次の様な理由で起る。膀胱か肛門かゞ温められて、其の熱の為めに粘液を局所に引き、其れが為に利尿困難を起すのである。之れが止めばよろしいが然らざれば吾人は利尿困難に特効のある薬を与へる。

 
 脱肛したときは軟い海綿を以て之れを押して還納する。そして蝸牛の摺つたものを塗る。其の際患者の手を押へて暫時の間足で懸垂すれば直腸が納まる。若し直腸脱の著しいときは患者の腹に帯を締めさせ、その帯の後方から更に一本の帯を下げて之を以て腸を内方に圧迫する。その際尚軟い海綿を楡樹の皮の削片を煮たる温水を浸して当てる。其の煎汁をまた肛門にも注ぎ、海綿を絞る、其の上で両股の間に繃帯を通して臍の処で結ぶ。
 患者が上厠せんとするときには、出来るだけ狭い便器で用を達す。子供の場合には母の足に坐らして膝に掛寄らせる。上厠の際には脚を伸ばさぬ様にする。斯くすれば直腸は容易には脱出しない。若し直腸が液を充満してゐて、そして腐敗物が流出するときは、炒つた葡萄酒の醸母及びミルタ水で其の周囲を洗ひ、尚ホウライシダを乾燥して刻んでから篩にかけて之を散布する。出血があるときは同じ物質を以て其の周囲を洗ひ、カルチキス扁栢、杜松、松、テレビン樹の削片を摺つて、等分にカルキチスに混じ、其れを以て罨法を施す。外部には濃い蝋軟膏を塗る。直腸が脱出して収まらぬときは、なるべく上等なるシルフイオンを細かく削り、出来得るだけ厚い層をなしてふりかける。鼻の下には噴嚏剤を用ひ、患者に噴嚏を起さしむる。或ひは又温水で石榴を軟くしたもの、又は明礬を白葡萄に摺り混ぜて其れを以て肛門を洗ふ。其の上捏粉を貼布して両脚を三日間縛して置く。そして甘い葡萄酒を与へる以外患者には絶食させる。若しそれでもうまく行かなければ代赭石を蜜と混ぜて之を塗る。直腸が脱出してその上出血が起るときには、白星海芋の茎の皮を剥いで、其の上之に穀粉を加へて摺り潰し、それが尚温い間に罨法を為す。又野生の葡萄でプシトリオンと名付くるものの根の最も細いのを取つて、之を純なる渋い黒葡萄酒で煮詰める、其の上之を摺潰して微温の間に罨法をなす。又粉を其れに混じ之を微温の白葡萄酒及び微温のオリーフ油と掻き混ぜたものをも用ひる。之も亦一方法である。
 吾人は又ドクニンジンを摺つて芳香性白葡萄酒をそれに加へて微温の間に罨法を為す。これも亦一方法である。
 肛門が炎症を起したときは常春藤の根を水で煮て之を細かく摺り、極上の穀粉を加へ、白葡萄酒で練つて、之に脂肪性の物質を加へて罨法を為す。これも一方法である。
 又吾人は曼陀羅華の最も若い根を取り、(若しそれが無かつたら乾いたものでもよい)生のものを水で洗ひ、細かに刻み、葡萄酒に投じて煮る。其れで罨法をなす。乾燥したものでは之れを摺り潰して同じ様にして罨法をなす。 
 又他の方法、メロンの中味を摺り潰して罨法をなす。

 一〇
 
痛が起つて而も炎症が無いときには、赤い曹達を焼いて之れを細粉となし、又明礬と塩を焼いて細末にし、これを等分に混合する。それから純良の瀝青を混じて、之れを貼布し而して巻布で固定する。
 他の方法。続隋子(ホルト草)の葉を摺潰し、袋の中に之を入れて繃帯で固定する。焼灼の感があるときには、之を取去り、そして新しいものと交代する。若し此のホルト草がないときには、根の皮を刻んで黒の葡萄酒と摺混ぜ、同じく繃帯で固定する。此の薬は脾臓の痛みにも良く効く。
 罨法の形で用ふる薬のうちで、冷却作用あるものは流出を妨げて軟化し、又温める作用のあるものは流出を容易ならしむる効がある。この収斂作用は病を乾燥性となし又弱めるものである。
 本病は胆汁と粘液が此の場所に固定するとき起るもので、肛門が炎症を起したときには、樹脂、オリーフ油、蝋、モリブダイナ及び脂肪性の薬を塗擦し、尚出来得るだけ温くして之れを貼布すべきである。


岩波書店 今 裕  訳編 「ヒポクラテス全集」  (名著刊行会)から
[ 原文表記とは異なります。一部を除き旧漢字は、新漢字に改めてあります。間違いはご容赦ください。]
※■=木偏に聖(下部は壬)


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