療痔病経ニ云ウ。
仏、阿難陀ニ告ゲタマワク。汝、諦聴スベシ、此ノ療痔病経ヲ読誦シテ受持シ、繋心シテ忘ルル勿レ。他ノ人ニ広ク宣説ヲ為セ。此ハ諸ノ痔病ヲ悉ク除クヲ得、謂ウ所ノ風痔、熱痔、陰痔、三合痔、血痔、腹中痔、鼻内痔、歯痔、舌痔、眼痔、耳痔、手足痔、背脊痔、糞門痔、遍身支節ニ生ズル所ノ諸痔、是ノ如キ痔病ヲ癒ス。悉ク皆、乾燥堕落銷滅シ、必ズ瘥ユ。疑ウコト無カレ。是ノ如キ神咒ヲ受ケ、即チ、即ヲ説ケ、ト。
槇佐知子著「医心方 巻七 性病・諸痔・寄生虫篇」 筑摩書房 一九九九年三月発行 より引用。以下も、すべて引用。
■通釈
『療痔病経』(※1)にいうには、
仏陀が、弟子の阿難陀(※2)に告げていわれた。「汝よ、よくよく聴きなさい。この『痔を治療する経』を読誦して身につけ、心に刻んで忘れてはならない。他の人々に広く説き伝えなさい。これはもろもろの痔病すべてを除くことができる。
いわゆる風痔(※3)、熱痔(※4)、陰痔(※5)、三合痔(※6)、血痔(※7)、腹中の痔(※8)、鼻の中の痔(※9)、歯の痔(※10)、舌痔(※11)、眼痔(※12)、耳の痔(※13)、手足痔(※13)、背脊痔(※14)、糞門痔(※15)、全身や手足の関節の関するさまざまな痔(※16)、このような痔病を癒すものである。みな悉く乾燥してはがれ落ち、消滅し、必ず瘥いえる。疑ってはならない。このような神呪を受け、すぐにこれを説きなさい」と。
<以下は字の説明です。>
■語釈
※1 『療痔病経』 法顕が漢語訳した医書。
※2 阿難に同じ。釈迦の十大弟子の一人で釈迦の従兄弟に当る人物。『聖六字増寿大明陀羅尼経』宋西天三蔵大師施護奉詔訳に、阿難には大疾病痔瘻があったこと、釈迦が彼の許を訪れ、次の呪を伝えたことを記す。
※3~16までの痔のうち、15の糞門痔だけが現代の痔と共通する。その他の痔病が何をさすかは不明。
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