■病草紙 病草紙(やまいのそうし)は、平安時代末期から鎌倉時代初期頃に描かれた絵巻物。絵、詞書ともに作者は未詳。当初は巻子本だったが、現在は場面ごとに切り離されている。簡単な説話風詞書に一図の絵を添え構成された、当時の種々の奇病や治療法など風俗を集めたものである。1巻の巻物であった16段と、これとは別に伝来した断簡5段の計21段分が残り、現在は各段ごとに分断され、国宝9段など各地に分蔵。この他、別系統の模本も伝わる。 伝来 この絵巻は、現状は各場面ごとに切り離されているが、本来は巻物で、江戸時代後期には、尾張の歌人で本居宣長の門下である大館高門(おおだてたかかど、1766 - 1839)という人物が所蔵していた。巻物には土佐派の大和絵師の土佐光貞による寛政8年(1796年)の奥書が加えられていた。それによれば、この絵巻は当時「廃疾画」と呼ばれ、全部で16図あったが、うち1図(白子)を大館高門から土佐光貞へ譲渡。光貞は、代わりに「白子」図の模写と、自分のもとにあった別の1図を高門に贈った。「白子」図の模写は絵巻の最後に付加された。東京国立博物館には、この絵巻を1898年(明治31年)、高屋肖哲という画家が写した模本が保管されている。なお、この巻物と一連のものだったと思われる断簡が複数存在し(後述)、『病草紙』が当初全部で何図あったのかは不明である。 近代まで1巻の巻物として伝来した15図(分割された「白子」図を除く)は次のとおりである。 鼻黒の親子、不眠の女、風病の男、小舌のある男、口より屎する男、二形(ふたなり)の男、 眼病の男、歯の揺らぐ男、尻に穴多き男(痔瘻の男)、陰虱(つびじらみ)をうつされた男、 霍乱(かくらん)の女、せむしの乞食法師、口臭の女、眠り癖のある男、顔にあざのある女 上記のうち、太字の9図は名古屋の関戸家所蔵を経て、現在は京都国立博物館蔵となっており、国宝に指定されている。他の図は各所に分蔵されている。関戸家旧蔵のものには上記のほかに早くから断簡として伝わった2図(「侏儒」「背骨の曲がった男」)があった。この他に前述の「白子」図(原家旧蔵)があり、また、同じ絵巻から早い時期に分割されたと思われる「小法師の幻覚を生ずる男」(村山家旧蔵)、「鳥眼の女」(益田家旧蔵)、「肥満の女」(松永家旧蔵)の3図が現存し、計21図の存在が確認される。大和文華館所蔵の「鍼治療」を含めると22図であるが、「鍼治療」の図は画風がやや異質で、別系統のものと考えられている。[1] (「ウィキペディア」から引用) ■
(詞書) あるおとこむまれつきにてしりのあな あまたありけりくそまるときあな ことにいてゝわつらはしかりけり (釈文) 或る男、生まれつきにて、尻の穴 数多ありけり。くそ ごとに出でて、 (説明) 日本絵巻大成7「餓鬼草紙 地獄草紙 病草紙 九相詩絵巻」 秋山虔他執筆 中央公論社から引用 |
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