北海道 ■ヘビノタイマツ(天南星)の茎根を炉で焼いて、布に包んで尻の下に敷いて座るとよくなる。 ■ハコベを焼いて蓬の擂り汁と白絞油で練ったのを肛門から差し込むように塗る。 ■イボ痔にタマクラミミズと女なら男の髪、男なら女の髪を弱火で煮て、白絞油で練ってつける。 ■鶏卵の黄味だけを黒焼きにして出た脂をつける。
青森県 ■痔には、古い干し菜を煮てそれを敷く。(俗信辞典)
岩手県
■大根の干葉でむず。 ■ヘビイチゴの実の汁をつける。 ■ヤマイモの根の皮をとり干して煎じて飲む。 ■ヤマアザミの煎汁をつける。 ■ハシリドコロの茎・根を干し煎じて汁をつける。 ■トクサを煎じて飲めば痔の出血がとまる。 ■田螺の肉をあぶって粉にし白粉を少量加え唾でつける。
宮城県
■わらびを食べると痔を悪くする。(医療の云い伝え) ■柿の葉を煎じてつけるとよい。(医療の云い伝え) ■痔にユリの花。(医療の云い伝え) ■「イチジク」の根または皮を煎じ白布に浸し熱い内に局部にあてる。(朝鮮全羅北道・仙台市)(薬草集覧)
■秋田県
■脱肛には、柿の葉を五分ないし七分位火に焙りそれで静に押し入れる。(薬草集覧) ■「肛門痒ク痛ミアル時」は「どくだみ」全草を塩で揉み出た汁を以て肛門部を洗う。(薬草集覧)
山形県
■なめくじを擂りつぶしてつける。
■「ナメクジ」を黒砂糖にて溶解し、これを白フランネルにのばし局部に貼る、乾けばまたとりかえる。(山形市)(薬草集覧) ■痔や脱肛を治すには、タニシを焼いて粉にし、白粉と水少々で練り患部に貼る。(新庄市)(俗信辞典)
福島県
■タケニ草の湯に入るとよい。 ■モグラ・木鼡の黒焼きがよい。 ■リスの黒焼きは痔の薬。(俗信辞典)
茨城県 ■イチジクの葉の乾燥したものを刻んで袋に入れて風呂に入れる。 ■イチジクの果実を食べる。
■サトイモに卵の白身を練り混ぜて貼る。(俗信辞典)
栃木県
■なめくじを胡麻油で揚げて痔につける。 ■土ぐもを胡麻油で揚げて痔につける。
■「さくらそう」全草を天日で乾燥し煎用する。(薬草集覧)
■ニンニクを薄く切って肛門の上に蓋になるようにあて、液汁を自然に肛門にしみこませる。(俗信辞典)
群馬県
■うどの根を蒸し、その湯気を肛門にあてると痔に効く。 ■なめくじは、痔の薬になる。
■脱肛に、黒焼きとなせし「とくさ」を細末とし少量を肛門に挿入する。 ■モグラを生きたまま土釜に入れて炭になるまで焼くと痔の薬になり、ちょとなめただけでも効くといい、福島・茨城でも、モグラの黒焼きを痔の薬とするという。(俗信辞典)
埼玉県
■カタバミを煎じて飲むと痔に効く。 ■あおきの葉を煎じて患部に塗るとよい。 ■藤の皮で風呂をたてて入ると痔に効く。 ■イチジクの葉を乾燥させ、風呂をたてて入ると痔に効く。葉を温め患部に貼ると痔に効く。 ■やまめは痔に効く。 ■「痔ろう」に「にんにく」一片を毎回小刀で削り滲み出した汁を患部に浸み込ます。最初の三回くらいに 止め、日毎に回数を増す。(薬草集覧) ■「痔ろう」に「にんにく」を二分くらいの厚さに横切りにし艾を上せ火を付け患部を撫でる。(薬草集覧) ■ミミズの黒焼きの粉をゴマ油で練ったものは痔に効く。(俗信辞典)
千葉県
■ドクダミの根を掘ってきてカラカラに干し、煎じて飲む。
■ドクダミを煎じて患部につける。(俗信辞典)
東京都 ■「イチジク」の実を食する。(東京府八王子市)(薬草集覧) ■「アラメ」を茹でてその汁にて腰湯するとよい。(東京市)(薬草集覧) ■「おおばこ」茹で食しても可。また陰干しにし煎じて局部を温む。(東京市)(薬草集覧) ■「さくらそう」全草を天日で乾燥し煎用する。(東京市)(薬草集覧〉 ■「どくだみ」の根を擦り一回量一匁ずつ一日三回服用する、同時に生の根十匁と陰干しにせる葉十匁とを 三合の水で半量になるまで煎じ一日三回に分服する。(東京市)(薬草集覧)
神奈川県
■無花果の葉を良く干しこれを煎じて腰部を温めるとよい。またその生葉を千切ると白い液が出て来るこれを肛門に塗るのもよい。(薬草集覧) ■「いちじく」の葉を湯に入れ腰湯を使う。(薬草集覧) ■「かたばみ」の紫の種類のものを陰干しにして煎じ局所を蒸す。(薬草集覧) ■「イボヂ」は茄子の蔕を陰干しとなし、黒焼きにして粉となし胡麻油少量を加えて泥状とし患部に塗布する。 (薬草集覧) ■カタツムリの黒焼きを粉にして種油で溶いて塗るとよい。(俗信辞典) ■痔のまじないには、ナシを二つに割ったのを、便所の中で元のように合わせておくと治る。その後でナシを断つ。(『三浦耳袋』)『日用諸疾宣禁集』に、ナシは痔疾禁物に挙げてある。(俗信辞典)
新潟県
■イチジク。
■「イチジク」の葉をすり一日三回洗浄する。(薬草集覧) ■脱肛は「かたばみ」を煎じて洗う。(薬草集覧) ■杉の生葉十匁に甘草少量を入れ煎用して三度に分服する。(薬草集覧) ■イワナは痔の薬にもなる。(佐渡郡)(俗信辞典)
富山県
■ニンニクを熱い灰で焼いてつける。 ■ネギの白いところを蒸し焼きにして貼り付ける。
■「どくだみ」の生芽を茶碗に入れ文火にかけドロドロの液として皮膚に塗布する。(薬草集覧) ■ナメクジを砂糖か塩をつけて飲めばよい。(俗信辞典)
石川県
■イチジクの干した腰湯。 ■いぼ痔にカキの葉を焙って裏をあてておく。 ■ダイコンの干葉の腰湯がよい。 ■ユキノシタの葉をあぶって揉んで貼る。 ■ヨモギ湯につかる。 ■モグサをきせるで焼き、煙を尻の穴に吹き付ける。 ■梅干を黒焼きにし熱湯を入れて飲む。 ■カタツムリを生で飲む。 ■小さなナメクジを生で飲む。 ■ネズミの子でまだ毛の生えないものを土で包んで黒焼きにし、それを綿に包んで患部にあてる。
■「かたばみ」を陰干しにし約百匁を二升の水に入れ煎じて患部を洗滌する。一日一回。(金沢市) (薬草集覧)
福井県
■卵の油をつける。 ■イチジクの葉の汁をつける。 ■ツバキ・ドクダミ・ニンニクを練ってつける。 ■針のある丸いシャボテンをおろして布に塗り、患部に貼る。 ■扁平な石をあぶって熱くし、患部にあてる。
■「イチジク」の実を二つに開いて患部に貼る。(武生町)(薬草集覧) ■「だいこん」の干葉の湯に入る。(三国町)(薬草集覧〉 ■ 卵の油をつける。(俗信辞典) ■サボテンを痔に貼る。(俗信辞典)
山梨県
■大根の葉を干し、湯に入れて入浴または腰湯する。
■金峯鉱泉で湿布または罨法する。(薬草集覧) ■「どくだみ」を、土用より秋彼岸までの間に採取せるものを陰干しとなしこれを年中茶の代用に常用すればよく効を奏す。これらの病は十日や三十日で効があらわれぬ故、気長に服薬するを要する。(薬草集覧) ■「へびいちご」の果実を瓶中に貯え置き、腐敗したものを毎回便通のたびごとに局所につける。(山梨郡) (薬草集覧) ■痔や冷えにはノギクの陰干しを風呂に入れて入浴する。(俗信辞典)
長野県
■鶏卵の黄身を油で炒ってつける。 ■猟師から買った熊の油を肛門に塗る。 ■蓮根のおろしたのを飲むとよい。 ■イチジクの葉を入れた風呂に入るとよい。
岐阜県
■アザミの根や葉を乾燥させ、煎じて汁にし痔疾の部分を洗うと効く。 ■ヘチマの実を黒焼きにして水で練り、痔の患部に塗るとよく効き、疣痔にはとくによい。
■脱肛は、「かたばみ」を煎じて洗う。(薬草集覧) ■杉の生葉十匁に甘草少量を入れ煎用して三度に分服する。(薬草集覧) ■馬糞を釜に入れ蓋に十銭白銅貨大の穴を開け蒸しつつ痔を湯気の出る所にあてる。(八名郡) (薬草集覧)
■大葉子は痔に効く。(俗信辞典)
■万年青の見を飲む。(俗信辞典) ■カヤの実は痔病に効く。(俗信辞典) ■黄身を鍋で煎る。(俗信辞典)
静岡県 ■イチジクの汁。
■ナメクジと黒砂糖を練ってつける。(俗信辞典)
愛知県
■オキナグサの根を煎じて飲むと痔に効く。
■「肛門痒ク痛ミアル時」は「どくだみ」の草および根を摺りガーゼまたは綿に浸し患部につける。(薬草集覧) ■ドクダミの根をちぎって飲む。また、煎じて飲む。(三河)(俗信辞典) ■スルメと塩水を食べたり飲んだりする。(南設楽郡)(俗信辞典) ■干し菜を煮てあくを出し茹でて洗う。(俗信辞典) ■ナメクジを食べる。(南設楽郡)(俗信辞典) ■ナメクジと黒砂糖を布に包み、出た汁をつける。(南設楽郡)(俗信辞典) ■ネズミの裸子を油漬にして、痔につける。(俗信辞典) ■痔にはヒルの血を吸わせる。赤味噌にヒルを混ぜ、紙の上にのせたものを痔の上に置き、灸をするとよい。(南設楽郡)(俗信辞典) ■ヤマドリは痔の毒。(俗信辞典)
■無花果と蓮 痔疾にも種々の病状があつて、比較的に苦痛の少ないのと、疼痛の烈しい為に身の置きどころすらないやうなものもあります。さういふ苦しい場合にはせめて痛なりと薄らぐ事をどれ程思ふか知れません。無花果の葉を煎じた汁で肛門をよく洗つて、蓮を卸し金で摺た汁を、小さな盃一杯に梅酢二三滴を混ぜて飲むと、一週間くらゐで余程軽快に向ひます。これは愛知県下で用ひてゐます。(手軽で有効な家庭療法) ■青海苔 これはいぼ痔に有効なもので、乾した青海苔を火にあぶつて粉にし、それを日に三四回づつ患部につけておくので、名古屋地方で行ふ方法です。(手軽で有効な家庭療法)
滋賀県
■痔にはゲンノショウコの風呂に入る。(俗信辞典)
■黒砂糖とミミズを晒木綿で包んで皿の上に吊るしておき、たまった汁をつける。(高島郡)(俗信辞典)
京都府 ■アオキで薬風呂をたて、臀部を温める。(俗信辞典)
大阪府
■イチジクの葉を焼き局部を温める。
■にんにく にんにく(薬種屋にあります)を一分位の厚さに切つて、片面だけを火に焙りますと、汁が浮かんできますから、その冷めないうちに患部に当て、日に二三回繰り返し、四五日も続けると非常に楽になるものです。これは大阪あたりでも用ひています。(手軽で有効な家庭療法)
兵庫県
■イチジクの葉を乾燥させて風呂に入れると痔によい。
■米のあら糠で摩擦し、また柿渋を塗る。(広島市)(薬草集覧) ■ドクダミの根をわさびおろそでおろし、梅干ほどの大きさにしたものを飲み下し、干し葉の湯で腰湯をつかう。(俗信辞典)
奈良県
■蓮華の上に座ると治る。 ■土の団子を三つ便所の神に上げる。 ■当薬(せんぶり)・ガゴソの煎茶を飲む。 ■茗荷を食べるとよい。 ■脱肛には行者蕗の葉を温めて押し込む。 ■ぢ(痔)には、あをのり(青海苔)をこ(粉)にして、ごまのあうら(油)にぬりつけてよし。 (明治十四年、大和国添上郡大安寺の岩井源三郎が書き留めた民間療法集、『まじないの事』)
和歌山県
■「いちじく」葉を陰干しとし薬湯に用いる(薬草集覧) ■痔脱肛は、「かたばみ」を煎じて数回洗う(薬草集覧) ■「どくだみ」三匁を水三合にて煎じ一日三回分服する。(薬草集覧)
中国地方 ■なめくじ これは切痔に効のあるものです。なめくじに砂糖をかけておきますと、暫くたつうちにどろ?に溶けたやうになりますから、その汁を日に数回患部に塗りつけるものです。痛みも楽になり治りも早いといはれて、中国地方では用ひてゐます。(手軽で有効な家庭療法)
島根県
■痔の悪いときは便所の棚に榊を立て灯明をあげて祀る。よく効くという。
岡山県
■イチジクの葉柄などから出る白い汁をつける。 ■ツワブキの葉で痔をおさえる。 ■ヒジキを食べるとよい。 ■疣痔はナメクジ六匹もあれば必ず治る。黒砂糖と練って患部に塗る。 ■疣痔にナメクジと黒砂糖を練ってつける。(俗信辞典) ■痔には、卵の油が効く。(俗信辞典)
■ナメクジの黒焼きを飲む。(俗信辞典)
■螳螂と胡麻油 切れ痔には螳螂を二三疋串にさして火にあぶり、狐色になるまでに焼いて、それを胡麻油五灼くらゐの中に、焼きたてのもを漬け、一週間位そのまゝにしておいてから、その油を患部をよく洗つて脱脂綿をつけて、日に二三度患部に当てると効があるものです。岡山県下ではこの方法を用ひます。(手軽で有効な家庭療法)
山口県
■煙草をほぐして患部につけると、随分しみて一時は痛むがよく効く。 ■イチジクの実や葉柄から出る白い汁を患部に塗る。 ■ネギの白根に熱湯を注ぎ、その汁を塗る。 ■ドクダミの生葉を蒸し焼きにして患部につける。 ■ドクダミ陰干のものを煎じて飲む。 ■ドクダミの生の葉の絞り汁を塗りつけても効く。 ■ヘチマの実の黒焼きを種油で練ってつける。 ■ベンケイソウの葉を煎じた汁で患部を洗うと痛みがうすらぐ。 ■カタツムリの殻をとり、身をすりつぶし患部に塗る。
■茄子のへた 茄子のへたを陰干しにしたもの四つ位を黒焼にして粉にし、それが一週間の分量ですから、一日二回づゝ 服用しますと、すべての痔に効があつて治りが早いといつて、山口県下ではこの療法を用ひてゐます。(手軽で有効な家庭療法)
徳島県 ■イチジクの葉を煎じて飲む。 ■鶏頭を干して煎用する。
香川県 ■きくらげを煎じて飲むと痔の薬。(俗信辞典)
愛媛県 ■メギの根を細かく刻んで煎服すると下痢・痔に効く。(俗信辞典)
高知県
■イチジクの茎の折り口から出る白い汁や、葉を煎じた汁を熱して患部につけることが多かった。 ■イチジクの陰干にした葉を煮出した汁を薄めた風呂に入って腰を温める。 ■ドクダミの葉・茎・根を煎じ、薬として服用した。 ■ナメクジを白砂糖漬にして、患部につけると痔の特効薬になる。
■「イチジク」の葉十枚を浴槽に投入して入浴する。(吾川郡)(薬草集覧) ■白の「ホウセンカ」の花弁五、六枚の汁を肛門に貼付する。(吾川郡)(薬草集覧)
福岡県
■ツワブキに赤味噌をつけて焼き、貼る。 ■河豚を黒焼きにして貼る。 ■茄子のヘタの焼いたものを貼る。 ■脱肛には、むくげの濃煎汁で洗浄。 ■「赤えいを食べません」と誓って祈る。
■「鶏卵」の新鮮なる卵黄をフライパンで気長に焙るしばらくすると黒褐色の粘稠なる油が出てくる。 (卵五個より油が盃二杯とれる)それを脱脂綿に浸し患部に貼る。(直方市)(薬草集覧) ■「痔漏」に河豚の肝を種油で煮て肝が細くなったらその油を脱脂綿につけて肛門に貼る、その量は 中等大の肝一個に付き種油四合、ただし毒が烈しいから処置した後手をよく洗うこと。(直方市)(薬草集覧)
熊本県
■ドクダミを揉んで丸薬として患部に塗布する。
大分県
■患部に蜂蜜を塗る。 ■タニシの黒焼きを粉にして胡麻油で練って患部に貼ると痛みがとれる。
宮崎県
■イチジクの葉を陰干にして保存し、風呂に入れて浴すれば痔疾に効く。 ■馬糞を燃やして尻を燻すと痔を治すことができる。
鹿児島県 ■ヤツデの葉の煎汁を局部に塗る。
沖縄県
■海ウナギは痔病を治すとされる。 ■猪肉を食べる。
参考((引用)文献
○明玄書房「北海道・東北の民間療法」、「関東の民間療法」、「中部の民間療法」、「近畿の民間療法」、 「中国・四国の民間療法」、「九州・沖縄の民間療法」(引用項目末尾に表記のないもの)
○宮城県医師会編集「医療の言い伝え」宝文堂(引用項目末尾に「医療の云い伝え」と表記)
○帝国女子医学薬学専門学校 薬学科 現東邦大学薬学部 編著 「日本民間薬草集覧 にっぽんの 民間医療の原点」 かのう書房 1985年11月25日発行(引用項目末尾に「薬草集覧」と表記)
○角川書店「日本俗信辞典」鈴木諮棠三 昭和五十七年十一月二十五日初版(引用項目末尾に「俗信辞典」と表記)
○家庭之友社「各地方で行はるる手軽で有効な家庭療法」 大正十三年五月三日発行
原文表記と異なるところがあります。旧漢字は新漢字に改めています。また、すべての漢字にルビが振ってありましたが、読みにくいと思われるものに限定しました。なお、原本は国立国会図書館 近代デジタルライブラリーにあり、それを引用しています。(引用項目末尾に「手軽で有効な家庭療法」と表記しています。
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