S.T.A.R.R.
排便出口障害(Outlet Bowel Obstruction)の新しい治療法
排便出口障害(Outlet Bowel Obstruction)とは、排便障害、排便困難、残便感などを主症状とする便秘を訴える疾患の一種です。その代表は直腸瘤で排便時に便が直腸の前方へ押し出され、したがって膣の後壁が膨隆する状態となり、思うように便を排出できなくなります(中国で直腸前突と呼ばれる所以です。)排便したとしても便が残った感じが強く、何度もトイレに行くことも多いのです。

この直腸瘤は直腸と膣の間の膜、直腸膣間膜が薄くなり、伸展しやすくなったため生じることが最大の原因です。これは長年の強いいきみ排便や排便時の肛門挙筋との協調関係が不全のため直腸内圧が上昇して直腸が前方へ突出し
やすくなるのです。排便時に会陰や臀部を手で押して排便しているような人は直腸瘤がある可能性が高いといえます。

直腸瘤について詳しくはこちら さらに詳しくは、辻仲病院 柏の葉 直腸瘤のページへ こちら

一方、直腸が重なり下降して肛門から便が出にくくなって排便障害をおこすのが直腸重積(Rectal Intussusception)です。これが悪化し不完全直腸脱になったり、さらに肛門括約筋がゆるんでしまうと完全直腸脱になることもあります。

直腸脱について詳しくはこちら

したがって、排便造影(デフェコグラフィー)を行なって直腸重積の有無や程度を診断することは大変重要なことです。従来は何本もの縦列縫合をして重積の短縮をおこなってきました。しかし、近年S.T.A.R.R.法という非常に確実で信頼できる手術法が開発され、欧州を中心に多く施行されるようになっています。S.T.A.R.R.は(Stapled Trans Anal Rectal Resection)の略語で、PPH01という環状自動縫合器を前2/3周、後ろ側2/3周と分けて直腸を切除して直腸重積を治します。
日本では当院が最初に施行し良好な成績をあげつつあります。症例が集積されており学会などで発表しております。

短期的な結果から見ると、S.T.A.R.R.術後の患者さんは極めてスムーズに排便できることがわかりました。
この方法は、術後の疼痛もほとんど無く、PPH法に習熟したベテランの大腸肛門専門医ならば安全に行なうことができます。